約1年ぶりのDTC-1500ESの修理です。中古購入したものの不具合が発生しているとのことです。
DTC-1500ESはこの2・3年で急激に値上がりし、現在ではジャンク品であっても手が出ないほど高嶺の花となっています。
今回のご依頼は2点です。まず1点目は、正常に再生されていたテープを一旦取り出して再度再生すると音が途切れ途切れになるということです。
2点目は録音時にモニター再生に切り替えると音が出ないというものです。録音はOKですので、4ヘッドのうち再生専用ヘッドの系統に不具合が生じているということになります。
早速カバーを開けてメカの動作状況を目視点検します。いつ見ても凄い造りです。
と、その前に、ヘッドチップのすぐ横に付着物が見られます。すでに無くなってる標準のスポンジクリーナーがヘッド表面を侵した痕跡です。テープに悪影響を及ぼしますので、柔らかい爪楊枝などでザラツキが無くなるまで除去します。
ヘッドのメンテナンスが完了しましたので再生してみました。テープガイドは上がり切っているように見えましたが、ドライバーでつつくとかなりグラつきます。これが一点目の原因と思われます。
2点目の原因を特定するために、私が所有している1500ESのメカを接続してみます。不具合は起きませんので、本体の基板等ではなくメカ部のヘッドまたはRFアンプの故障ということになります。ヘッドの故障でないことを祈ります。
本体からメカを取り出して、今度はRFアンプを私の1500ESと換装してみます。ヘッドの生死が決定する緊張の一瞬ですが不具合は起きませんでした。ということはRFアンプの故障決定です。
まずは故障している再生モニター専用のRFアンプです。10μFが4ケ取り付けられています。スペースに余裕がありますのでリードタイプに交換します。
続いて録音・再生用です。22μFが2ケです。先ほど同様交換します。
録音状態で動作テストです。綺麗に再生モニターできます。次の作業に移ります。
メカの分解整備を行います。メカをひっくり返して、
?・・・なぜかコネクタがひとつ外れてました。以前修理した際でしょうか?エンドセンサーのコネクタですので、さほど動作には影響は無かったのでしょうね。
基板を外して各ユニットを取り出します。ヘッドのフラットケーブル破損に注意します。
分解を進めます。
不具合の原因はここでしょう。本来はスライドする銀色のパーツがグリス硬化で動きません。硬くなったグリスを加熱して柔らくしてCRCで溶かし、ふき取ってからシリコングリスを塗布します。
モーターの回転をギヤに伝達するベルトです。5年~10年に一度は交換が必要です。
可動部にシリコングリスを塗布し組み立てていきます。リングギヤが調整式となっていますので、スムーズかつグラつきが無いように組み付けます。
続いてリールメカです。ブレーキパッドが貼り付いた痕跡が残っており、ブレーキの効きも甘くなっています。
ブレーキパッドの表面がすり減っているのがわかります。
ブレーキを分解しパッドを張り替えます。
組立て本体と接続し再生テストを行います。かなりノイズ混じりな音ですがこれは想定内です。
案の定、テープパスが狂っています。以前、テープガイドが不安定な状態でテープパス調整が行われたものと思われます。修理によりテープガイドが正規な位置に安定したため再調整が必要となったということです。
次はDTC-1500ESのウイークポイントのひとつ、ドライブボード等のコンデンサーです。写真はドライブボードですが、ここの電解コンデンサー液漏れでリールモーターやキャプスタンモーターが不動となります。この機体はすでに対策済みです。裏にバイパス線が処置されていましたので、漏れだした電解液で一度スルーホールを痛め故障したと思われます。コンデンサーは全数交換済みでした。
これはデジタルボードで、同様のコンデンサーが使用されていますが、なぜかここは未交換となっています。
100μFが11ケ、47μFが4ケ、10μFが2ケです。全体的に端子のくすみが見られ、特に47μFでは液漏れによる基板の汚れが見られました。すべてリードタイプに変更しました。
基板を組み込み、メカを仮接続して録音済みの数種類のテープ再生、アナログ/デジタル、STANDARD/LONGモードにおける録再状況の確認を行います。
完成しました。