少し前に当店でDATデッキを修理されたお客様からカセットデッキのメンテナンス依頼がありました。
機種はナカミチのCR-30、3ヘッドデュアルキャプスタンモデルです。
依頼内容は、「中古で入手したものの、とにかく音質が悪い」ということです。ヘッドアジマスの狂いが原因でしょうか?
まずは基本的なところから進めます。ヘッド・ピンチローラーのクリーニング、消磁を行います。
テープ速度を点検します。315Hzのテープを再生します。左は調整前、右は調整後です。
続いてヘッドアジマスです。ナカミチ独特のヘッド周りです。左端が録音ヘッド、右端が再生ヘッドのアジマス調整用となっています。中央の2つはチルト等ですが、ここは基本的に触れてはいけません。テストテープを用いて調整します。
左は調整前で逆位相となっています。右は調整後です。
テスト信号を録音して特性を点検します。左から315Hz、1000Hz、10KHzの信号です。左写真はSOURCEで各周波数で同レベルですが、右写真TAPE(再生音)ではレベルも小さくなっていますし、特に高域が減衰しています。バイアス調整が必要なようです。
このデッキには、フロントパネルにバイアス調整ツマミが設けられていますが、調整範囲が狭く、適正値まで調整できませんので基板上のバイアスとレベル調整用の半固定抵抗で調整します。左写真はバイアス、右はレベルで、テープ種別・左右別となっています。
TYPEの異なる数種類のテープを用いてSOURCEとTAPEで同レベルになるよう調整します。テープの種別ごと、LR別ですので最低でも6回繰り返します。
ここで問題が発生しました。ノーマルテープでの調整は順調に終わりましたが、クロムテープでは調整範囲を超えています。一瞬焦りましたが、すぐに原因がわかりました。
私もナカミチのデッキは数台所有していてときどき戸惑うのですが、テープセレクターが手動切り替えとなっています。
左からEX(NORMAL)、SX(CROM)、ZX(METAL)、EQ120/70μ(120:NORMAL、70:CROM・METAL)ですが、うっかりここを切り替えるのを忘れていました。
その後は順調に作業を進め、最後はCDを音源に録音再生します。高域も伸びた良好な音質です。