ナカミチの3ヘッドカセットデッキ、LX-5の修理依頼をいただきました。
早送り・巻き戻しはOKですが、再生ではリールが回転しないということです。
テープを入れないで再生ボタンを押すと、普通通りリールが回転しました。ところが、キャプスタンが回転していません。ベルト切れでしょうか?
カバーを開けて確認します。予想に反しベルトは正常ですがモーターが回転していません。モーターには電圧が掛かっていますので、モーターのトラブルです。
この機種のモーター入手は困難ですので、今回は修理不可か?と思いましたが、とりあえず指でモーターのプーリーを回してみると、かろうじて動きだしました。おそらくモーター内部の接点が酸化し接触不良を起こしたのが原因と思われます。
フロントパネルを取り外し、メカに接続されているコネクタをすべて外します。
メカに接続されているアースはモーターに半田付けされていますので一旦切断します。
ヘッドのコネクタ1ケを外すために底部の基板をOPENします。
メカを取り出す際に引っ掛かりますので電源スイッチの延長バーは取り外します。
これで内部からメカブロックを取り出すことができます。大型のメカです。同じNakamichiのDRAGONのメカに似ています。
このメカに使用されているベルト類は、①回転を検知するための右側リールに掛けられているベルト(折長120mm(径76mm)、太さ0.8mm)、②メカを作動させるモーターに掛けられているモードベルト(径42mm、太さ1.6mm)、③キャプスタンベルト(折長133mm(径85mm)、幅5mm、厚さ0.5mm)と④アイドラーゴム(厚さ3mm、外径20mm、内径14mm)の4種類です。
このうち、トラブルが発生しやすいアイドラーゴムとモードベルトは交換が必須となります。
モーターに直接電源を接続し、自己の回転による内部の接触不良の改善を促します。
接点が改善するにつれて表示される電圧が上がっていきます。
メカを分解していきます。
ようやくアイドラーゴムにアクセスすることができました。特注したアイドラーゴムと交換します。
ゴムの当たり面や接点の清掃を行います。
キャプスタンの軸部にシリコングリスを少量塗布し組み立てていきます。キャプスタンベルトは先に掛けておいて、キャプスタンモーターを取り付けた後にモータープーリーに掛けてやります。
モードベルトは組み立て後でも取り付けできます。
本体に組み付けました。
動作はOKですので調整に移ります。
テープ速度を調整するために315Hzのサイン波が録音されたテープを再生します。少し速めですので、モーター背面の調整孔にドライバーを差し込んで調整します。
数値はワウフラッターで0.2Hz前後は揺れますので315Hzを中心に触れるように調整します。
続いて12.5KHzの信号が記録されたテストテープを再生しヘッドアジマスの点検を行います。右肩上がり45度になるように合わせます。
録再調整です。315Hz、1000Hz、10KHzの信号を入力し、再生モニターが同じレベルになるように調整します。
テープの種類ごと、左右別にバイアス量とレベル調整が可能です。3種類✖左右の計6回調整を行う必要があります。
完成しました。古さを感じさせない洗練されたデザインで私も欲しくなりました。