今月2台目のLX-5です。
長期保管後「巻き戻し・再生不可」に至ったということです。
再生ボタンを押すと動作に移行するのですが右側リールが回転しません。また、ピンチローラーも上がりません。
メカを取り出すためにカバーを開けます。ケーブルの状態からこれまで一度もメンテナンスを受けていないものと思われます。
メカユニットにはヘッド用コネクタ3、メカ作動用コネクタ2と、写真の半田付けアース1がありますのですべて切り離します。
うちヘッド用コネクタは2層になっている基板の上側裏にあります。
フロントパネルのコネクタを外し、固定しているビス上下6本を外してフロントパネルを分離します。
メカは前面4箇所のビスで固定されていますが、基板やケーブルと干渉するので、基板を固定しているビスを外して隙間を広げた方が作業はしやすいかと思います。
キャプスタンモーター、フライホイールを取り外して、2層になっているリールメカを分離します。
このカムによってヘッドやピンチローラーを駆動していますので組み付け時は要注意です。
アイドラーゴムを交換します。元々のものはカチカチに硬化しバラバラになってしまいました。
モードベルトも硬化変形しています。
メカ内部のリーフスイッチの接点を清掃します。
キャプスタンに微量グリスを塗布し、新しいモードベルトを取り付けて組みなおします。
ここで新たな問題が判明しました。ピンチローラーが上がらないのはモードベルトスリップが原因かと思いましたが、ピンチローラーアームが固着して全く動きません。古いグリスを除去するためには分解清掃が必要なのですが、この機種のピンチローラーは圧入式のブッシュで固定されていて、ちょっとやそっとでは分解できません。
そこで登場するのが、先日ブログで紹介した「ギヤプーラー」です。ただし、再取り付けは分解前と同じ位置にセットしなければなりませんので、分解前に位置をノギス等で0.1mm単位で記録しておく必要があります。
右側のピンチローラーも同様に分解します。テープガイドは破損防止のため予め取り外しています。ピンチローラーも作業の支障となるため同様です。清掃後は分解前に測定した位置にきっちり取り付けます。
メカを元に戻して動作テストです。しかしテープ速度が異常に遅く不安定になっています。長期保管中にモーターの接点が接触不良気味になっていると思われますので、テープをセットしないで動作させ1日以上放置します。
一日以上経過しましたので、状況を確認します。最後に調整した速度より2%以上早くなっていましたので適正値に調整し直します。数値の振れもかなり改善されましたので調整に移ります。
まずは再生ヘッドのアジマスと左右バランスです。かなり狂いが見られました。右は調整後です。
ここで録音再生状態を確認しました。ところが録音がAMラジオの音のようです。
原因は録音ヘッドのアジマスの狂いでした。大幅に狂っていましたので人為的なものと思われます。
最後はテープ種別ごとにバイアスとレベル調整を行います。
ようやく完了しました。3日がかりの修理でした。