SONYのDATデッキDTC-2000ESの修理依頼をいただきました。
不具合の状況ですが、
① 再生時音飛び、ノイズ混じりがある。
② カセットをセットしても無反応のときがある。カセットハウジングランプが点灯しない。
以上2点です。①は様々な原因が考えられますが、②については、カセット検出スイッチの接触不良が原因です。
カバーを開けてテープをセットし動作状態を目視点検します。再生を開始すると音は出るのですがDATデッキ特有の音飛び、ノイズが発生します。その時テープを覗き込んでみるとリールの回転が明らかに不規則です。走行系に不具合が考えられる原因としては、以下のとおりです。
1 ピンチローラー劣化によるテープのスリップ
2 リールメカのブレーキトラブル
3 キャプスタンモーター故障
これら点検を進めます。
メカを取り出してカセットトレイを分離します。
このスイッチが②の原因ですので接点復活剤を隙間から微量吹き付けます。
ピンチローラーです。若干表面にテカりは見られますが、触感では弾力が残っているように感じます。
手持ちの良品と一旦交換し、再生テストを行いましたが不具合の状況は変わりませんでした。
次に移ります。メカをひっくり返して基板を取り外すと各構成ユニットにアクセスすることができます。
2DDリールメカです。右写真に写っている青いパーツがソレノイドといってブレーキを作動させる部品です。この取り付け位置が経年により正規の位置からずれてブレーキが効きっぱなしになることがありますが、それはありませんでした。
最後です。キャプスタンモーターを手持ち中古品と交換します。SONYのDATデッキでは、形式が「U-17A」「U-17B」というのがありますが、取り付けするネジ穴の位置の違いだけです。
動作テストです。正常に再生されます。近年、キャプスタンモーターの故障が増えています。モーター自体の修理は困難ですので、パーツ確保が今後の課題になります。
続いてメカのメンテナンスに移ります。
トレイベルトを新品交換します。折長110mmです。
トレイメカの可動部にシリコングリスを施します。
構成ユニットを取り外します。
リングギヤは比較的最近メンテナンスが行われたようで、古いグリスが除去されシリコングリスが塗られていました。
モードベルトです。右側新品に交換します。
ギヤ類を組み立てます。
リールメカのブレーキパッドの点検を行います。
状態は良好です。
メカのメンテナンスが完了しました。
本体に仮接続して走行テスト及びヘッドからの信号チェックを行います。
この機体では左側表示の暴走は起こりませんが、内部から覗いてみるとタクトスイッチは製造時のままです。
DTC-2000ESでは高い確率で操作スイッチの接触不良による表示暴走が起こりますので、関連するスイッチずべて交換します。
計18個あります。
取り外したスイッチの抵抗値は大きいもので100Ω程度でした。本来は0Ωです。
各モードにおける録音テストを行い修理完了です。