最近カセットデッキの故障の原因で多くなりつつあるのが「リールモーターの故障」です。そして、その故障の原因は、内部ブラシ・整流子の酸化による接触不良がほとんどです。
新品のモーターが入手できるのであれば交換して修理完了となるのですが、そういったケースは稀で、大半は中古モーターを探すかモーターのオーバーホールを行うことになります。
この故障が起きる原因は、リールモーターの使用特性と大きく関係しています。
リールモーターは、無負荷のときは、毎分1000回転以上の速度で回転しますが、再生時には、右側リールの回転速度に合わせた速度で回転することになります。おそらく無負荷の時の数分の一の回転数になっていると思われます。
一方、モーター内部のブラシと整流子は、経年により酸化が進み、接触状態が次第に不良となっていきます。そういった状態で、回転が低速な再生状態が続くと、回転中に一瞬ではありますが、完全な絶縁状態となり停止してしまいます。ただし、早送りや巻き戻しではモーターが高速で回転していますので、一瞬絶縁状態となっても慣性でモーターが回転し続け、接触が回復しますので停止することはまずありません。
また、この故障は、モーターがより低速となるテープの後半部分で起きやすいという特徴があります。
しかし、この故障を少しでも回避する方法があります。
それは、早送りや巻き戻しを意識して日常的に多用するということです。そのことにより、モーターが長時間高回転し、ブラシと整流子の摩擦によって酸化被膜が除去されます。
一番理想なのは、使用前に一度テープの往復分を早送り・巻き戻ししたのちに最初から最後まで再生をするというものです。なぜなら、再生状態でテープを巻き取ることが「乱巻き」や「固巻き」を防止することができテープの保存という面からも望ましい状態となるからです。
もう30年以上経過した機器を扱うということは、少し面倒なことが多くなりますが、それもアナログオーディオの楽しみだと私は思っています。