AKAI(A&D)社製のカセットデッキのリールモーターは、MABUCHI製のRF-510Tという形式のものが多く使用されています。代表的なのは、GX-93(73)、GX-Z9000(7000)、GX-Z9100(7100)で、GX-R70などのオートリバース機でも採用されています。
頻度としてはまだまだ少ないのですが、このリールモーターが故障という事例を年に1・2回ほど、数十台に1台程度扱うことがあります。
故障の原因はほとんどが内部の接触不良ですが、このモーターに限らずこういった場合の一般的な修理方法としては、
1 新品と交換
2 同等品または中古良品と交換
3 オーバーホール
4 高速回転させて接点を自己回復
上記のいずれかから選択することとなります。ただし、新品のモーターを入手できるケースは少なく、先に記載したRF-510Tもそれに当たります。
ここからが本題です。先日、このリールモーターの故障でGX-Z9000の修理依頼をいただきました。上記の理由から中古モーターと交換を行い、同様の不具合が発生しないか半日から1日程度再生テストを行ったうえでお客様のところにお送りしたのですが、お客様のところに届いて間もなく「同様の不具合が生じた」とご連絡をいただきました。
すぐさま機器を返送いただき、数台保管しているほかの中古モーターと交換し動作テストを行いました。それから2日ほど経過し不具合は発生しませんでしたが、その間、何とか同等品の新品モーターが入手できないかとネットで検索していました。すると、「ebay」という海外のオークションサイトで新品のRF-510Tが出品されていることを発見しました。新品交換であれば前回のような失敗はまずありえませんので、即決で落札しました。
イギリスの出品者でしたが意外と早く到着しました。
早速、一度交換した中古モーターを取り外し、カバーや基板などの付属パーツを交換し取り付けます。
セットし再生してみました。ところが、正常に動作開始したと思ったら途端に停止してしまいました。
早送りをしてみると、通常の数倍以上のスピードで回転します。何かが変です。
再度取り外して中古モーターと比べてみました。外形はもちろん、刻印、「MABUCHI」「MADE IN TAIWAN」という表記まで瓜二つです。
巻き線の巻き方が少し雑に見えますがほぼ同一です。ただし、一点だけ大きく異なる点を見つけました。それは、モーター巻き線の抵抗値です。元々のものが30Ω程度であるのに対し、新品は3Ω程度しかありません。それで電流が多く流れ高速回転したものと思われます。
いずれにしてもこのモーターは使用することはできませんので、これまでどおり中古モーターを活用するしかありません。それにしても何のために、外観や型番が同一で定格の異なるこのモーターを製造したのでしょうか?