SONY製ダブルカセットデッキ、TC-WE505のベルト交換の依頼がありました。オーナー様が途中まで作業を行い、その後の作業を当店が引き継ぐこととなりました。
デッキABともにオートリバースですが、録音機能はBのみです。
デッキAとBで若干仕様が異なっています。
左がデッキA、右がBです。基板にメカが直付けとなっていますので少し作業は面倒です。
初めての機種でコツがわかりませんので、遠回りにはなりますがフロントパネルまで切り離して作業します。まずはデッキAです。
モーターブロックを切り離します。ベルトはキャプスタンと右写真のモードベルトの計2本です。
デッキAのキャプスタンベルトは溶けていたようですが、オーナー様により清掃済みです。写真のようにベルトを仮掛けしてモーターブロックを取り付けます。
続いてデッキBです。フロントパネルとカセットホルダーのバックパネルが一体化されていますので、メカは前に倒しながら引き抜きます。
こちらは溶けたベルトが貼り付いています。綺麗に除去して先ほどと同様ベルト交換を行い、動作テストです。ところがデッキAは正常に動作するのですが、デッキBが誤作動を起こしています。フォワード再生は可ですが、それ以外はガチャガチャいってテープが走行しません。
ロータリーエンコーダーの接触不良による誤作動に似ていますが、この機種には採用されていませんので違います。あれこれと1・2時間程度格闘してようやく原因を発見しました。
写真中央に写っているのは、リールモーターの軸に取り付けられているギヤです。このギヤは左右リールの駆動とモード切替を行うものですが、動作中のメカを覗いてみると、モーターが回転しているにも関わらずギヤがスリップを起こしています。再度分解してみると写真のように割れが生じていました。そのためモード切替がうまくいかなかったようです。
接着剤での固定も試しましたがトルクの掛かる箇所なのでスリップは止まりません。ジャンク機から中古パーツを移植するという手もありますが、費用が嵩むこと、交換してもまた同じ故障が起きる可能性が高いことなどから、その旨オーナー様にお伝えし、今回は修理中止となりました。
このギヤは同年代のダブルカセットのうち、普及価格帯のデッキに採用されていますのでご注意ください。