A&Dのデッキの修理が続きます。今回はGX-Z7100EVです。
オーナー様のお話では、このデッキは5年ほど前にオークションで当店から購入されたということです。PCのトラブルでこちらには取引の記録は残っていませんでしたが、5年前と言えばまだこのブログを開始する前で、オークションを中心に機器を販売していた時期です。
今回は、整備から5年以上通常に使用されたデッキがどのような状態であるかを検証する貴重なチャンスです。なぜなら私が所有するデッキもすべて自分で整備を行いましたが、数が多いため稼働率が少なく、ほとんど置物状態となっているからです。
不具合の状況は、「リールが回転しない」というものです。ボタンを押すとモーターの音は聞こえますので、アイドラーゴムのスリップのようです。
今回は、オーナー様に以下4案をご提案し、「4」で整備することとなりました。
1 アイドラー交換及び録再調整 8000円
2 アイドラー及びピンチローラー交換及び録再調整 12000円
3 メカ分解整備及び上記1を含むリフレッシュメニュー 19800円
4 メカ分解整備及び上記2を含むリフレッシュメニュー 23800円
カバーを開けました。手前味噌になりますが、ケーブル類が整然と束ねられていますので、修理歴が無いように見えます。
メカを取り出してカセットホルダーを分解します。
経年により変形が進んだホルダーのスプリングを加熱整形します。
ヘッド周りの固着はありませんが、古いグリスを拭き取って、新たにグリスアップを行います。
ピンチローラーはかなり固くなっています。オーナー様のリクエストにより新品代替品に交換します。
左右リールとアイドラーを取り外します。ゴムの当たり面をアルコール清掃します。かなりの汚れが見られます。
5年前に張り替えたブレーキパッドは健在のように見えましたので、最初はそのままで組み立てましたが、走行テストの結果、表面が硬くなって摩擦力が必要以上に強くなっていましたので後ほど交換しました。
今回の故障の原因となったアイドラーゴムです。硬化が進行し表面が光っています。新品に交換します。
これでフロント部は完了です。
メカ背面の基板を外します。
フライホイール、ベルト共に汚れは少ない状況ですが、清掃、新品交換します。
カムモーターベルトの状況は比較的良好ですが、ここはGX機のウィークポイントBEST3に入りますので新品に交換します。
テープ天面の検知孔を検出するスイッチです。3つあるうちの左側は良好ですがそれ以外は黒く酸化しています。接点に流れる電流の差でしょうか。3つとも清掃します。
キャプスタンの貫通部に微量グリスを塗って組み立てます。
メカの整備が終わりましたので本体に組み込みます。簡易テストOKです。
左側のテープガイドの脱着を行いましたので、テープとの干渉が無いかチェックします。
テープ速度のチェックです。315Hzの信号が録音されたテープを再生しています。
コントロール基板の調整ツマミを回して合わせます。
再生ヘッドのアジマスをチェックします。僅かに狂いが見られます。
ヘッドの調整ネジを回して一直線になるようにします。EVはそれ以前のモデルとヘッドが異なりますので注意が必要です。
バイアスキャリブレーションを調整し、サイン波を入力します。
それを録音再生したのがこの写真です。傾きは左右レベルの差異、直線が開いているのは録音ヘッドのアジマスの狂いです。
ヘッド右側の調整ネジを回して、限りなく一直線・45度になるように合わせます。
CDを録音し、再生モニターで音質の聴感テストを行います。
最後にケーブルを元通り束ねて、完成しました。自分の整備したデッキの5年後の状態を確認することができたのは大きな収穫です。