先日の112RmkⅡと同じお客様から、今度は112mkⅡのメンテナンス依頼をいただきました。
動作品ですが、電源投入後に違和感を覚えました。
気のせいかと思いましたが、照明を落としてみると、やはりメーターランプが点灯していません。
フロントパネルを外して球交換の可否を調査します。
メーターは基板に半田付けされていて、その基板と本体基板はコネクタ接続となっています。メーターのアクリルカバーはセロテープで固定されていて簡単に開けられます。
特殊なタイプですが見たことのあるランプです。左右メーターのランプは直列に接続されています。したがって、片方が切れると両方とも点灯しなくなります。テスターを当てると14Vの電圧が掛かっています。ということは、7Vの電圧でほどよく点灯するランプが必要です。パーツは入手可能でしょうか?入手できない場合でもLED化などで対応可能ですが、できれば標準の仕様に近づけたいところです。
こういうときに頼りになるのは「ebay」です。
ありました。112mkⅡと書かれていますので間違いはないでしょう。さっそくオーナー様にご連絡し、パーツの手配を行いました。
ドイツから10日もかからずに到着しました。前回の112RmkⅡと同様、壊れやすいカムモーターのギヤも今回は交換します。
早速修理に着手します。非常に内部が綺麗な状態です。ピンチローラーもヘッドも新品のようです。
メーターを外します。元々付いているものは曇りガラスになっています。切れているのはR側です。
左右とも交換完了しました。
いい感じです。
メカを取り出して、まずは背面のメンテナンスを行います。
カムモーターを切り離します。
このアイボリー色のギヤが問題児です。経年劣化により割れやすいため、アメリカから取り寄せた補強タイプのギヤと交換します。
すでに中心部にひび割れが起きています。破損するのは時間の問題です。
ほかのギヤも中心部に塗られたグリスが硬くなり動きが重くなっていますので、脱着し清掃・再グリスを行います。
リールモーターを取り外してアイドラーゴムを交換します。12mm*8mm*2mmです。
フライホイールを取り外してキャプスタンの貫通部にグリスを施します。
続いて前面です。カセットホルダーを切り離します。
左右リールを脱着し、回転部分にグリスアップ、アイドラーゴムが当たる部分の清掃を行います。ほとんど汚れはありません。
元通りに組み立てて本体に組み付けます。動作テストは良好です。
念のためテープパスの点検を行います。
テープ速度です。まずはピッチコントロール切り替えをOFFにします。315Hzのテープを再生していますので2%速度が速くなっています。
ラックマウント金具を外すと調整用トリマーが現れます。315Hzを中心に針が振れるように合わせます。
続いてピッチコントロールをON、調整ツマミをセンターに合わせ、先ほどと同様に調整を行います。
ヘッドアジマスを点検します。若干狂いが見られます。
ヘッド左側の調整ネジを回して右肩上がり45度になるよう合わせます。
次はバイアス調整です。パソコンで315Hz、1000Hz、10000Hzの信号を発生させます。それをもう一台のパソコンで表示したのが右写真です。3本の縦線がありますが、3つの信号が同レベルです。
それを録音し、再生したのが左写真です。先ほどと同様3つの信号が同レベルになるよう、基板上のトリマーで調整します。テープポジション別に行いますので計3回繰り返します。
入力と出力のレベル、左右バランスの調整を行います。これも入力と出力が同じ傾きで同じ長さになるように合わせます。
最後は聴感テストです。少し入力を大きくするとピークインジケーターが赤く点灯します。
完成しました。やっぱりVUメーターは雰囲気があって良いですね。もちろん音質もバッチリです。