カセットデッキの最大の弱点は「ゴムベルト」です。私の知る限りゴムベルトを使用していないデッキはほとんどありません。
皆さんご存じのとおりゴムは劣化して性質が変化します。そしてこの変化もゴムの種類によって異なり、大きく2つに分けられます。
ひとつは合成ゴムなどに見られる「硬化」です。この硬化によりスリップや破断が起こり、メカが正常に動作しなくなります。
そしてもうひとつはウレタンゴム系に見られる「加水分解」です。一般的にゴムは水を弾く性質がありますが、長年かけて空気中の水分を吸収し性状が変化します。先ほどの硬化とは真逆の変化になりますが、次第に柔らかくなり、最終的には液状になります。
では、なぜカセットデッキで「硬化」するゴムと「加水分解」するゴムの両方が使用されているかというと、それはゴムパーツに求められる機能によります。
例を挙げますと、SONYのESシリーズのカセットデッキでは、ゴムパーツとして「モードベルト」「キャプスタンベルト」「ピンチローラー」が使用されています。
そのうち、モードベルトは力が加わる場所に使用されますので強度が求められます。これに該当するゴムが「ウレタンゴム」です。しかし、その反面、このウレタンゴムは最も加水分解しやすいゴムとなります。
残りの「キャプスタンベルト」「ピンチローラー」については、強度は必要ありませんが弾力性と耐久性が求められますので、おそらくCRゴムなどの合成ゴムが使用されているものと思われます。
メーカーも機器が使用される期間は、性状の大きな変化の無い5年から10年程度を想定していたでしょうから、上記の選択は正解かと思います。
ただし、納得が行かない点がいくつかあります。例えば、SONYのカセットデッキのキャプスタンベルトでは、比較的新しい型式にウレタンゴムが使用されていることがあります。これはどう考えても説明が付きません。
また、SONYやAKAI(A&D)以外のメーカーでは、使用される場所に関係なくウレタンゴムを使用していることが多く見られます。これはあまりにも配慮が不足しているのではないかと思います。
とはいえ、メーカーもまさか自社製品が30年以上使用されるなんて思っていなかったでしょうから仕方ありませんね。