以前当店でTEACのデッキを修理されたお客様から、今回はA&DのGX-Z7100の修理依頼をいただきました。
3ヘッドカセットデッキの定番中の定番といったイメージのあるモデルです。
早送りと巻き戻しは正常ですが、再生すると「ウー」とモーター音が鳴り続け、5秒ほどで停止します。カムモーターのベルトスリップが原因と思われます。
早速メカを取り出すための準備に移ります。「98年.4.27.ベルト・アイドラ」と書かれています。20年前に1度はベルト等の交換が行われたようです。
フロントパネルや底板を取り外し、コネクタを切り離してメカを取り出しました。
カセットホルダーを本体から分離し分解します。
ホルダー両サイドに設けられているカセットを押さえつけるバネを取り出して、
少し広げた状態でドライヤーで加熱し整形します。
メカに固着はありませんでしたが、古いグリスがところどころに塗られていて、硬化による動作不良の恐れがあります。
そこで、関係するパーツを分解し清掃します。
ピンチローラーは研磨し、専用クリーナーで処理します。
古いグリスを拭き取って、揮発性の低いシリコングリスを塗布し組み付けます。
左右リールとアイドラーの脱着を行い、スリップ対策として必要な箇所をアルコール清掃します。
硬化しているアイドラーゴムは新品代替品に交換します。
フロント面の整備が完了しました。
背面の基板を取り外します。
ベルト類は同サイズの新品と交換します。
カムモーターの裏側に隠れている検出スイッチの接点を清掃します。
元通りに組み立てます。
本体に組み込みました。動作良好です。
ミラーカセットでテープの走行状態(テープパス)を目視点検します。
315Hzの信号が録音されたテープを再生します。テープ速度が若干遅くなっていますので、コントロール基板上のツマミを回して調整します。
12.5kHzの信号が録音されたテープを再生し、再生ヘッドアジマスの点検を行います。かなりの狂いが認められます。
調整後です。
バイアス調整を行い、
入出力のレベル・バランスを点検します。バランスもそうですが、録音ヘッドのアジマスに通常よりも大きな狂いが見られます。しかし、A&Dのデッキでは、EV以外は録音ヘッド単独での調整は不可です。
バランスとレベルを合わせましたが、録音ヘッドのアジマスの影響を確認するため、
周波数特性を点検します。左写真は、315Hz、1000Hz、10000Hzの3種類の信号です。それを録音再生モニターしたものが右写真です。ヘッドアジマスの影響もあるのでしょうか、高域がわずかに減衰しています。
基板上のトリマで調整しましたが、やはりバイアスでは限界がありますので今回はこれで調整完了です。
以上修理完了です。