カセットテープに録音を行う際に重要なのは、そのテープに合った適正なバイアスを設定できるかということです。これが上手く調整できていないと、高域が減衰したり音が歪んだりします。
適正なバイアス量というのは、カセットテープの種類によって異なりますが、1970年代までは、多くの機種でバイアスは使用者が調整できない固定式でしたので、自分の所有しているデッキに最もマッチするテープを探し出すことが肝心でした。
その後、ユーザーの高音質への要望に対応するために、手動調整、さらには自動調整式のデッキが一般的になり、よほど劣悪なテープでなければ、どのテープを用いてもベストのバイアス量を設定できるようになり、手軽に高音質を楽しむことができるようになりました。
一方、バイアスの調整方法についてですが、例えば、AKAIのGX-93は完全手動方式で、
バイアスツマミを回して耳でそれを確認し調整することになりますが、
A&DのGX-Z9100や写真のSONYのTC-K555ESLなどは、メーターで表示されるレベルを規定値に合わせるという半自動調整方式となります。これは大変便利で簡単なシステムですが、ここに大きな落とし穴が待っています。
それは、メーターの狂いや回路に不具合がある場合です。いままで数多くのデッキを見てきましたが、製造から30年以上経過した現在では、バイアス調整システムにトラブルを抱えているデッキは決して少なくありません。
バイアスキャリブレーションをメーター表示のとおりに合わせたのに、SOURCEとTAPEの音があまりに乖離している場合は、間違いなくメーターの狂い、あるいは回路にトラブルが生じています。もちろんヘッドの劣化・摩耗または調整不良ということも否定できません。
自動調整だからと言って安心してはいけません。一番重要なのは、メーターではなく、自分の耳を信じることです。