今日はA&DのフラッグシップモデルGX-Z9100の修理です。
30年ほど前に新品購入したワンオーナー機ということです。
電源をONにするとモーター音が「ギギギー」と唸り、勝手にトレイが開閉し、開いた状態で停止しました。
「サイドウッドのワッシャーが割れている」とオーナー様から事前にご連絡をいただいていましたが、一つを除きすべて真っ二つです。これまでの経験上、割れていない方が珍しいといっていいほどのウィークポイントです。
弾性のある接着剤で貼り合わせ、クリップで圧着します。
メカを取り出すためにカバーを開けます。修理歴がありますが、ケーブルの束ね方から判断すると、メーカーサービスによるものではないようです。
メカを取り出してカセットホルダーを切り離します。
ホルダーを分解し、両サイドにある、カセットを押さえるためのスプリングを取り外します。
加熱して整形し機能回復を行います。
ヘッド周りに固着はありませんが、動きが緩慢です。
メカの可動部に塗布されているグリスが硬化しているのが原因です。
ピンチローラーの硬さを硬度計で測定します。かなり硬化が進行していますので、オーナー様の了解をいただき同サイズの代替品新品と交換します。
ヘッド周りを分解し、古くて硬くなったグリスをシリコングリスに置換します。
動きが軽やかになりました。
左右リールを取り外します。
硬化したアイドラーゴムを新品に交換します。ゴムが当たる面の清掃も行います。
前面のメンテナンスが完了しました。
続いて背面です。メカを前方に倒して基板を切り離します。
キャプスタンベルトの当たり面を清掃します。
トレイ開閉とヘッド・ピンチローラーを駆動するカムモーターです。ベルト交換は必須ですが、異音を発しているモーターも交換します。
テープ検出スイッチの接点が酸化していますので清掃します。
キャプスタンがメカを貫通する箇所にグリスを塗布し組み立てます。
メカのメンテナンスが完了しましたので本体に組み付けてテープをセットしましたが、テープが引っ掛かってトレイが完全に閉まりません。長期間不動のGX機に発生する不具合のひとつです。
検出スイッチを微妙に調整し、テープが引っ掛からないようにします。
調整後はセレクターが正常に作動しているか確認が必要です。
メカの動作はOKです。
テープガイドの脱着を行ったので、テープパスの点検調整を行います。
テープ速度の点検を行います。
ヘッドアジマスの点検を行います。逆位相気味です。
ヘッド右側の調整ネジを回して右肩上がり45度に合わせます。
バイアス調整を行い、
入出力レベルを合わせます。
いつも聴いているCDを録音して再生モニターを行い聴感で音質を確認します。最後にケーブルを束ねて、
完成です。外装・音質共に非常に状態が良い機体です。本領を発揮したGX機は最高ですね。