当ブログ初登場のPIONEERの高性能・高級カセットデッキT-1000Sです。
パイオニア製のデッキは、他メーカーと比べると、独自性が強いという印象があります。
電動のトレイが閉まりません。
カバーを開けて点検を行います。
メカを観察します。キャプスタンベルトが溶けて切れています。パイオニアやティアックのデッキの定番の故障です。
イジェクトボタンを押すと、トレイ開閉を駆動するこのプーリーが回転し始めますが、ベルトがスリップしてすぐに停止します。
このデッキのメカを取り出すのは少し厄介です。まずはフロントの化粧パネルを最初に外します。底面3本のネジと上面のこの外しにくい留め具2か所を外す必要があります。
RECVOLのツマミと化粧用のカラーも取り外し、化粧パネルを切り離すことができました。
続いてフロントパネルです。リッドのツメを破損しないように慎重にカセットホルダーから分離します。フロントパネルを少し前面に引き出さないとリッドを切り離すことができません。
正面4、側面4、底面2のネジを外してフロントパネルを取り外しました。
メカを底板に固定しているネジを緩め、接続されているコネクタ類を引き抜き、ようやくメカを取り出すことができました。
メカにはCT-A9Dなどと同じシステムが採用されています。
このメカには位相合わせが必要です。大きなギヤに合いマークが付いていますので、トレイが開いたときにこの位置に来るように組み付けなければなりません。
キャプスタンモーターが取り付けられているプレート、カムモーターユニットを切り離します。カムモーターユニットを取り外したときに、先ほどの大きなギヤと側面のプーリーのギヤの噛み合わせが狂うと、位相合わせが大変ですので慎重に作業を行います。
カムモーターのベルトが硬化しています。そのためスリップが起きていましたので新品に交換です。GX-93用の内径40mmが流用できます。
キャプスタンモーターのベルトは2本ありますが、2本とも溶けています。1本はGX-93用と同じ内径73mm、もう1本は内径63mmです。
次はメカ前面に移ります。リール周りにアクセスするためにバックプレートを外します。
アイドラーを取り出し、硬くなったゴムを交換します。これもGX-93用が流用できます。
あとは元通りに組み立てていきます。が、ひとつ注意が必要です。
組み立ててしまってからは、アジマス調整ネジを回すことができませんので、リッドをホルダーに組み込む前、写真のような状態で調整を行います。フロントパネルを固定している外しにくい留め具もそうですが、メーカーとしては「持ち主に調整は行わせない」ということでしょうね。余程DIYによるトラブルが多かったのでしょうか?確かにヘッド調整が一度狂うと簡単には元に戻すことができません。
キャプスタンモーター背面の調整ネジを回してテープ速度を合わせます。
12.5kHzのテストテープを再生して再生ヘッドのアジマス調整を行います。
入力と出力のレベル合わせを行います。
完成しました。このデッキも素晴らしいですね。