SONYのESシリーズのカセットデッキは、ESG以降のメカはほぼ同一(細部が若干仕様変更されています)です。
そして、このメカの最大の弱点は、例に漏れず「ベルト劣化」です。加水分解により弾力が失われ、メカが不動となります。
先日、不動品として入手したTC-K555ESGの修理を行ったときのことです。この機体もベルト劣化が原因でしょうか?
メカは大きく3つに分けられ、ベルト交換の際には写真のように分解を行います。
予想に反してベルトは健全です。しかし、よくよく見ると、白いシリコングリスが付着しています。
プーリーには加水分解で溶けたゴムのカスが付着しています。これではベルトがスリップしてうまく動きません。
プーリーをアルコールで清掃し、ベルトを写真のように仮掛けします。
そしてメカを組み合わせた後に、ベルトをピンセットでつまんで、モーターのプーリーに掛け直します。これが正式な方法になります。
今回整備した機体は、細部の処置などから、一目で個人の方が手を入れたものとわかりました。多少メカに強い方は、なんとかご自分で不具合を解消しようと考えるのはわからないでもありませんが、やるからにはキチンとやらなければ元も子もありません。
一方、ESシリーズのベルト交換を上記のように行うためには、テープガイド一体式のピンチローラーアームの脱着が必要となり、その結果、取り付け時に元の位置に調整する作業を伴います。これを行わないと、簡単にテープにキズが付いてしまいます。特にSONYのデッキではそれが顕著に現れます。ただし、調整するためには経験やコツ、専用の機材が必要になりますので、個人の方が行うには非常に困難な作業となります。
それを回避するために、メカを分解しないでベルトを交換するという方法が、個人のブログで紹介されているのを見たことがあります。
その方法は、というと、固定しているネジを緩めてモーターブロックを少し浮かせ、それによりできた隙間からベルトを交換するというものです。
確かに技術的には可能ですが、今回の機体のように、周囲に塗られたグリスがベルトに付着する可能性が非常に高く、また、私も一度試したことがありますが、なかなかうまくベルトを掛けることができず、結果として、前述の方法によるほうが確実かつ短時間で行うことができることがわかりました。
何事も「急がば回れ」ですね。