デジタル時代の現在において、「ワウフラッター」という言葉はほとんど耳にすることは無くなりましたが、私のような世代でアナログオーディオ、特にレコードプレイヤーやテープデッキをお使いになった方は、よくご存じかと思います。
厳密には、「ワウ」と「フラッター」という、周波数の上下に関する別な現象を合わせて表現した言葉になりますが、「ワウ」が周期の長いものであるのに対し、「フラッター」は周期の短いものを指します。
簡単に説明すると、再生音の揺れということになりますが、ワウフラッターは、モーターでレコードやテープを回転させるアナログ機器にとっては避けられない現象で、その性能が低い場合、ピアノの演奏などを録音した際に、ビブラートが掛かったように聞こえます。
そのため、アナログオーディオ全盛期においては、各メーカーがワウフラッター値の低減にしのぎを削り、特にテープスピードの遅いカセットデッキでは、モーターによる回転の乱れを吸収するフライホイールの大型化や、自動で回転ムラを修正するクオーツロックなど、さまざまな技術が投入され、1970年代では0.1%程度であったものが、1980年代では0.02%程度まで向上するなど高性能化が図られました。
しかし、メーカーが公表している値は、新品時のものですので、製造後30年以上経過したデッキでは、各部の摩耗や経年劣化などにより、ワウフラッター値が悪化している場合が少なくありません。といっても、悪化したものを元に戻すのは新品パーツが入手できない状況では非常に困難と言えます。
前置きは以上として、今回、果たして30年以上経過したデッキがどの程度のワウフラッター性能を有しているか、実測してみました。
もちろん、入手困難なワウフラッターメーターなどは用いずに、マニアの方が製作したフリーソフトを使用します。
パソコンで3150Hzの信号を発生させます。
その信号をデッキで録音し、再生モニターします。
ワウフラッター値の測定は、録音のみ、または再生のみで行うこととなっていますが、今回測定する値は、録音時のワウフラッターと再生時のワウフラッターが重なったものとなります。
したがいまして、実際の数値よりも高い(性能が低い)値となりますことをお断りします。
そのモニター音を別のパソコンで取り込み、フリーソフトで測定します。値は0.03強です。
いくつか他機種でも測定しましたが、ほとんどが0.03~0.06程度の値となり、意外ではありましたが性能は保たれていることが判りました。
余談ですが、中古デッキにおいてワウフラッターの良し悪しを決める要素としては、
1 モーター(キャプスタンモーター及びリールモーター)の劣化の度合い
2 キャプスタンベルト・ピンチローラーの精度
3 バックテンションの強弱
以上が主なものとなりますが、AKAI(A&D)のGX機では「3」が相当のウエイトを占めていて、テープ終盤で音揺れが発生するときはバックテンションが強すぎる場合ですのでご参考としてください。