これまで何度かお取引いただいている方から、PIONEERのオートリバースカセットデッキ、CT-90Rの修理依頼をいただきました。
昨年、当店では、下位機種であるCT-70Rの修理を行いましたが、これも同じ方がお持ちの機器です。
動作確認を行いました。再生等はできましたが、何となく動作が心細い感じがします。
バイアスを自動調整する「AUTOBLE」が作動しません。回路の不具合でしょうか?
メカを取り出すためには化粧パネルの脱着が必要です。
AUTOBLEのことが気になりますので、まずはスイッチの点検を行います。フロントパネルはネジとハメコミと両方で固定されていて、ここまで至るためにはかなりの工数を要します。スイッチをテスターで点検を行うと、やはり導通がありません。スイッチの接触不良です。
同じスイッチが8ケありますので、すべて交換します。PIONEERのタクトスイッチは特殊なものが使用されていることが多いのですが、この機種には幸いにもAKAIやSONYと同じものが使用されていました。
メカの整備に移ります。
トレイメカは複雑な構造になっていますが、基本的にはCT-980などと同じですので迷いなく分解していきます。
2DDリールメカを取り外します。
回転ヘッドの動作の滑らかさを点検します。ここの動きが悪い場合は、ヘッド周りをすべて分解して研磨する必要がありますが、今回は滑らかに回転します。
ピンチローラー、ヘッドを取り外します。
リバースに関係するパーツも分解し、擦れ合う箇所にすべてシリコングリスを塗布します。
ピンチローラーです。表面が劣化しています。
研磨し、専用クリーナーで処理します。綺麗になりましたね。
元通りに組み立てていきます。
メカ背面の基板を取り外し、
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布します。
PIONEERのデッキはほぼ100%、ベルトが溶けますが、この機体はそれがありませんでした。折角の機会ですので新品交換します。折長80mmです。
メカの整備が完了しました。
本体に組み込んで動作テストを行います。・・・・誤作動、無反応といった状況です。何が悪いのでしょうか?
ところが、突然動き出しました。
しかし、配線を触ると動作が停止します。特にこの辺りを触ると顕著です。コネクタの接触不良でしょうか?
コネクタ接続部の半田割れはありませんが、一度切り離してコネクタの穴を覗くと、3か所に異状が見られました。
ケーブルを引き抜きました。左は正常なもの、右は端子が折れています。これが接触不良の原因です。
部品取り用の基板に接続されているコネクタから端子部を調達します。
破損した端子と交換します。
接触不良は解消され、オートリバース動作も含め良好になりました。
AUTOBLEも動作するようになりました。しかし・・・録音ができません。
録音モードでテープは走行するのですが、音が記録されません。まったく録音できなということは、録音回路の電源系統の故障でしょうか?
サービスマニュアルを手配し、故障個所の特定を進めます。
(つづく)