ひさしぶりにWカセットデッキの修理依頼をいただきました。
SONYのTC-WR820です。デッキA、Bともに不具合を抱えています。
電源ONにすると、モーターが高速回転している音が聞こえます。
早速カバーを開けます。
デッキAはキャプスタンベルトがありません。Bデッキにはありますが、触ると弾力が無くなっているのが分かります。
メカを取り出します。ESシリーズのメカをベースにオートリバース化しています。
カセットホルダーを駆動する周辺パーツもESと同様、金属製になっています。この機種の後継機はコストダウンのため、プラスチック製パーツが多用されるようになりました。
カセットホルダーを切り離します。
フライホイールのバックプレートを取り外します。
キャプスタンモーターのプーリーにベルトが巻き付いています。
フライホイールを取り外し、
モーターブロックを切り離すとアシストモーターのベルトにアクセスできます。加水分解が進行し弾力がありません。
新しいベルトを仮掛けします。
ロータリーエンコーダーを取り外し、
分解します。
接点がかなり汚れていますし、段差もできていますので研磨清掃し、仕上げにスライド接点専用グリスを塗布し組み立てます。
テープ検出スイッチの接点を清掃します。
ピンチローラーはかなり劣化しています。コアが簡単に外れてしまいました。新品交換です。
あとはカセットホルダーを取り付けてデッキAのメカ整備は完了です。続いてデッキBもまったく同じメンテナンスを行います。
しかし、なぜかアイドラーがデッキAと異なるタイプのものが使用されていました。これはTC-K555ESGで採用されたタイプですが、以降のモデルは振れ幅の小さなタイプに変更されています。(以下デッキBのメカ整備については省略)
メカを本体に組み込みます。
まずはテープ速度の調整です。基板上の端子をショートさせ、315Hzのテープを再生状態にして、HIGH-SPEED DUBBINGボタンを押します。
すると倍速再生になりますので、基板上のツマミで調整します。
次はノーマルSPEEDです。デッキBも同様です。
次はアジマス調整です。少し狂いが見られますので、ヘッド横(FORWARDは左)のネジを回し、
右肩上がり45度になるよう調整します。リバースも同様、デッキBも同様です。
左右同レベルの入力を録音し、再生レベルが同じになるよう合わせます。
ヘッドホンVOLにガリが出ています。
フロントパネルを脱着し、VOL背面の隙間に接点復活剤を注入します。
RECVOLも同様です。
録音再生状態を確認します。
完成しました。ダブルデッキのほとんどの機種にはリレー再生機能がありますので、150分テープを使用した場合、5時間以上の再生ができますので大変重宝します。