当店に持ち込まれる故障デッキには、メーカーサービスや他店で「修理不可」と判断されたものも少なくありません。今回の修理も少し前に同様の扱いを受けたデッキに関するものです。
PIONEERの高級カセットデッキT-1100Sです。メーカー(パイオニアではありません)認定サービス店での点検の結果、「モーター、エンコーダー、ベルト不良。部品入手困難なため修理不可」と判断されたものです。ベルト不良はわかりますが、はたしてそれ以外の判断は正しいのでしょうか?
電源をONにしてもWAIT状態から変化しません。トレイも開きません。
カバーを開けます。コンデンサーやICに放熱のための銅板があてがわれています。分解された形跡はありません。
メカの取り出し方は、以前修理したT-1000Sと同じです。少し大掛かりです。
メカはCT-A9時代と変わりません。
キャプスタンベルトが2本とも溶けています。
フライホイールの押さえ板を外し、アルコールと綿棒で汚れを除去します。
新しいベルトを取り付けました。径73mmと63mmです。
続いてモードベルトです。
白いギヤに合いマークが付いています。カセットホルダーが全開時に9時の方向に向くように組み付けます。
一旦ギヤ同士を分解すると組立が厄介ですので、押さえながらベルトを交換します。径40mmです。
続いてフロント部です。化粧パネルを取り外すとリール周りにアクセスすることができます。
奥に見えるアイドラーにたどり着くまで周辺部品を分解していきます。
アイドラーゴムを交換します。標準は16mm*11mm*2.5mmですが、同サイズのものは入手できませんので、厚さは2mmです。
メカを本体に組み付けます。トレイ開閉OKです。
テープ走行もOKです。
315Hzのテープを再生してテープ速度の点検を行います。
キャプスタンモーターの背面にドライバーを差し込んで調整します。
ヘッドアジマスはほとんど狂いがありません。
バイアスを調整し、左右同レベルの信号を入力します。
それを録音再生モニターし、バランスとレベルを調整します。
CDを録音再生モニターし聴感テストを行います。
完成しました。「部品入手困難なため修理不可」とメーカーが判断した機器であっても専門店では修理可能です。特にテープデッキは最後の調整などの仕上げで大きく性能が変わりますのでご留意ください。