SONYのTC-K333ESLです。
突然再生ができなくなったということです。7・8年前も同様の症状になり、他店で修理されたということです。
おそらくベルト劣化によるスリップが原因と思われますが、トレイ開閉はできますので初期症状です。
RECVOLが右側に傾いていて、フロントパネルと干渉しています。まずはここから治します。
カバーを開けて、フロントパネルの化粧板を取り外します。
ツマミを取り外します。シャフト部分が曲がっているのではなく。土台部分が変形しています。一旦VOLを取り外します。
ドライバーで変形を修正し、ツマミ類を取り付けます。
メカのメンテナンスに移ります。カセットホルダーと化粧パネルを取り外します。
ピンチローラー、アイドラーを取り外します。左側ピンチローラーを取り付けるシャフトにゆるみが生じています。
ピンチローラーは再利用が難しい状態です。後ほど交換します。
キャプスタンモーターを切り離します。
モーターを分解します。
ここのシャフトにピンチローラーが取り付けられているのですが、
ゆるみが生じて簡単に抜けてしまいました。このシャフトが抜け出すと、ピンチローラーが前方にせり出してきて、テープの巻き込みの原因となりますので、抜け止め措置を施します。
キャプスタンのシャフトにグリスアップします。
モーター基板上の電解コンデンサーの端子が液漏れにより汚れています。
基板にも多少の影響は及んでいますが、幸いにもプリントパターンに断線はありません。新しい電解コンデンサーを取り付けます。
ベルトを交換し、モーターを組み立てます。
メカのフロント部を分解します。
今回の故障の主な原因は、このゴムベルトのスリップです。前回修理時に交換されたと思われますが、まだ弾力は十分にあります。では、なぜスリップしたのでしょうか?しかし、よくよく観察すると、表面が濡れているように見えます。これは、「ブリード」といって、ゴムのオイル分が表面ににじみ出たことによるものです。ゴムの配合により発生しやすくなりますが、これが原因でスリップを起こしたものと考えられます。
プーリーをアルコールで十分脱脂し、新しいベルトを仮掛けします。
ローターリーエンコーダーを取り外して分解します。
接点が汚れています。研磨清掃し、スライド接点専用グリスを塗布し組み立てます。
テープ検出スイッチの接点を清掃します。
組み立てを行います。
先ほど仮掛けしてあったベルトをモータープーリーに掛け直します。
キャプスタンモーターを組み付けます。
ピンチローラーを交換します。コアが劣化してユルユルになっていました。
メカの整備が完了しましたので、本体に戻して走行テストを行います。
ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視で点検します。
315Hzのテープを再生してテープ速度の点検を行います。
ヘッドアジマスを点検します。狂いは僅かです。
ヘッドの調整ネジを回してアジマスを合わせます。
バイアス調整を行い、左右同レベルの信号を入力します。それを録音再生モニターし、バランスと音量調整を行います。
数種類のテープを用いて録音状態を確認し、修理完了です。