久しぶりのTC-WR965Sです。
ベルト交換というご依頼ですが、まずは点検を行います。
デッキA、Bともキャプスタンが回転せず再生は不可です。しかし早送り巻き戻しは両方とも可です。ただし、動作音が大きいのが気になります。
カバーを開けてメカ(デッキA)を取り出します。
カセットホルダーと化粧プレート、ピンチローラー、アイドラーを取り外します。
ピンチローラーの状態はというと、先日の記事にも書きましたが、ブリード現象で表面に油分が浮いてきています。これはテープの巻き込みなどトラブルの原因となりますので交換が必要です。
フライホイールを押さえているパネルを取り外します。
キャプスタンベルトが溶けて、フライホイールやモータープーリーに貼り付いていますので、アルコール清掃を行います。
フライホイールを取り外し、シャフト部にグリスアップします。
モーターブロックを切り離します。ベルトが伸びていますので新品と交換します。
プーリーを脱脂し、ベルトを仮掛けします。
ローターリーエンコーダーを分解します。
相当汚れています。研磨清掃し、スライド接点専用グリスを塗布し組み立てます。
テープ検出スイッチの接点を清掃します。
組み付けに入ります。
新しいピンチローラーを取り付けます。
オートリバース機は、一部の機種を除き、左右キャプスタンが常に逆方向に回転するようベルトを掛けます。
元通りに組み立てました。
メカを本体に戻すときは、ビスの取り付けに注意です。写真でわかるとおり、上部と下部のビスの長さが異なります。機種によっては、上下逆に取り付けるとリバース動作しなくなります。
本体に組み込んで、動作テストです。テープ走行はOKですが、1点、問題が起きました。イジェクトボタンを押すと、リールが2秒ほど巻き戻し動作を行った後にOPENします。確かこのメカはそういった動作はしないはずです。そのため、テープTOPでは、巻き戻し動作ができず、イジェクトされません。
誤作動ということで、てっきりロータリーエンコーダーの接触不良と思い、メカを再度分解して接点を清掃しましたが、症状は改善されません。
なぜ、イジェクト時にリールが回転するのかメカの動作を観察します。すると、本来は、イジェクト時にリールをロックするはずの装置が途中で引っ掛かっていることがわかりました。
この部品です。これが途中で引っ掛かってリールの回転をロックできないため、リールが回転してしまうというものです。
引っ掛かっている箇所をヤスリで削ります。
不具合が解消されました。
続いてデッキBの整備に移りますが、先ほどの不具合以外は同じ工程ですので、割愛いたします。
リバースデッキは、動作が複雑ですので、リレー再生状態で、半日から1日程度動作状態を確認します。
異状は起こりませんでしたので、調整に移ります。基板上の端子をショートさせてテストモード状態にします。
再生中にハイスピードダビングボタンを押すと倍速再生になります。315Hzのテープを再生していますので、630Hzに合わせます。
基板上のツマミで調整します。針が左右に振れますので630Hzを中心になるように合わせます。
続いてノーマルスピードです。デッキBも同様です。また、ピッチコントロール状態でも調整します。
ヘッドアジマスを点検します。
オートリバースは往復調整を行います。まずはフォワード、
続いてリバースです。
波形の長さは高域の出力を表します。デッキBも同様に調整します。
入力に対する出力バランスを調整します。デッキBも同様です。
最後に聴感テストを行い修理完了です。