PIONEERのDATデッキ、D-07Aの修理依頼をいただきました。
久しぶりに使用したところ、いくつか不具合が見られたということです。
① カセット取り出し口のOPEN CLOSEの動作が悪い。
② DATの読み取りができにくい。
③ 読み取れても、音が出ない。クリーニングTAPEでヘッドを清掃(10回程度)。
④ 96KHZ分のDATはノイズ入りで再生できるが、その他44.1,44.8分では音が出ない。
⑤ ④の状態も、翌日試すと、また、③の状態に。
リッドを手で開けると、この位置で本体と干渉し、引っ掛かりを感じます。
テープをセットし再生します。ABS-TIMEは表示しますが、音が出ません。
クリーニングを行いましたが状況は変わりません。
また、時々、セットしたテープを認識しないことがあります。
カバーを開けます。
メカを取り出します。後部にはヘッドの信号を処理するRFユニットが取り付けられています。
RFユニット上の電解コンデンサー5ケをすべて交換します。うち1ケに液漏れが見られました。
一旦メカを本体に戻して動作テストを行います。再生OKとなりました。
再度メカを降ろし、トレイユニットを切り離します。
ローディングモーターに直接電圧を加え、数時間空回りさせます。これで内部接点の接触状態の向上が図られます。
ピンチローラーを取り外します。表面がツルツルになっています。
軽く研磨し、専用クリーナーで処理します。
メカを裏返します。
ロータリーエンコーダーを分解します。
汚れた接点を研磨清掃し、スライド接点専用グリスを塗布します。
元通り組み付けます。
メカの右側に小さなモーターがあります。このモーターの内部接点は接触不良を起こしやすいため、先ほどと同様、直接電圧を加え空回りさせます。
トレイ開閉の不具合の原因は3つあります。一つ目はローディングベルトです。力の掛かる箇所ですので、滑りにくいバンコードに交換します。二つ目はトレイメカのスライド部分の滑りです。パーツ同士が擦れる箇所にシリコングリスを施します。
三つ目は、リッドの引っ掛かりです。両面テープで貼られている化粧カバーが浮いて、本体と干渉します。
接着剤で貼り合わせ、クリップで挟んで数時間放置します。隙間が無くなり、引っ掛かりも無くなりました。
メカを本体に戻して動作テストです。再生はOKです。
ところが録音が不調です。音が途切れるのですが、クリーニングテープを長めに走らせても一向に改善されません。
オーナー様からは録音の不具合のお話はありませんでしたので、ヘッドの故障では無いと思われます。まずはRFアンプを別のものに交換しました。しかし状況は変わりません。
そこで、ヘッドの状態を拡大鏡で点検すると、ヘッドチップに汚れがこびりついていることが確認できました。クリーニングテープでは除去できないようですので、毛先の細いブラシにアルコールを浸み込ませ、直接汚れを拭き取ります。なお、力の加減を間違えるとヘッドチップを破損する可能性がありますので、むやみに真似をしないでください。
無事復旧しました。
入力別、モード別の録音再生状態を確認し、修理完了です。