PIONEERの3ヘッドオートリバースカセットデッキ、CT-980の修理依頼をいただきました。
オーナー様が高校生の時に購入されたデッキで、20年前に一度パイオニアで修理したものの、半年後にまた動かなくなり、それから20年間不使用だったということです。ご覧のとおりトレイ蓋は破損しています。
基板に水がこぼれて腐食した箇所があったということで、その修理のためと思われるバイパスケーブルがジャングル状態になっています。今なら基板ごと交換するでしょうから、昔の修理者は根気強かったということが伺われます。
思い入れのあるデッキを何とか蘇らせたい、ということで、ドナー機までご用意していただきました。しかし、点検を行うと、見る限り、ドナー機のほうが状態が数段良好です。また、元々お持ちのデッキには回転ヘッドの固着が見られ、修理は難しい状態です。
そこで、私のほうから、中身はドナー機を使用し、フロントパネルは元々お持ちのものを使用するということをご提案し、その方向で修理を行うこととなりました。
メカを取り出しました。
メカ背面の基板を取り外し、フライホイールを取り出します。
キャプスタンベルトが溶け、乾いた状態で張り付いています。
綺麗に清掃し、キャプスタンのシャフトにグリスを微量塗布、新しいベルトを掛けて組み立てます。
カセットハウジング内の化粧プレートを取り外すと、2DDのリールモーターが現れます。
リールモーター、カセットホルダーを取り外します。
メカを下から見たところです。回転ヘッドがスムーズに動作するか確認します。このデッキでは、これまでの経験上、50%の確率でヘッドが固着していますが、幸運にもこの機体はセーフです。
どんどん分解していきます。
このパーツによりオートリバース動作を行っています。パーツ同士が擦れる箇所にはシリコングリスを塗布します。
パーツが擦れた箇所が変色していますので、そこにもシリコングリスを塗布します。
スプリングが跳ねないように爪楊枝を刺しています。ピンチローラーの表面を軽く研磨し、専用クリーナーで処理します。
完全に組み立てる前に、一度動作テストを行います。リールモーターを取り付けた状態でないとリバース動作が上手く動作しないので要注意です。
メカを元通りに組み立てて、本体に組み付けます。しかし、録音が不調です。基板の故障です。
結局、元々オーナー様が所有されていた機体にメカを組み込むこととなりました。再生、録音OKです。
315Hzのテープを再生して速度の点検を行います。許容範囲内に収まっています。
ヘッドアジマスの調整を行います。FWD、REVの両方で行います。
左右同レベルの信号を入力し、バランス調整を行います。
この頃のPIONEERのデッキは、ボタン類が激しく錆びています。
研磨材を用いて磨きました。
バイアス調整を行うAUTOBLEを装備していますので、ボタンを押すと自動で調整を行い、
音質が劇的に変化します。
完成しました。オーナー様の大切なデッキを無事復活させることができ、ひと安心です。