今日は大変貴重なデッキを修理しました。
私が若かったころの憧れのデッキ、AKAIのGXC-730Dです。コンポタイプのデッキでは、初のオートリバース機です。
かなり長い間、保管状態だったのでしょうか?いくつか不具合を抱えています。
1 両方向共に再生可である(ただし、リバースボタンを押してもフォワード方向で再生)が10秒程で停止する。
2 左CH出力不良(音が出ない)。
3 REW、REC、PAUSEボタンが固くて押せない。
4 カウンターリセットができない。
現状、わかる範囲では以上ですが、古いデッキですので、接触不良やメカ固着が不具合の原因であると考えられます。
早速カバーを開けます。メカのベルト類は見た目では異常は見られません。
この頃のデッキで必ず発生する不具合は、録音・再生の切り替えやモード切り替えのシステムのトラブルです。操作レバーが基板上のスイッチに直結し物理的に切り替えを行っているのですが、レバーの固着やスイッチの接触不良により不具合が発生します。
そのレバーは底板に取り付けられているのが一般的ですので、状態を確認するため底板を外してみると、怪しげなものが付着しています。
触るとカチカチになっていて接着剤のように思えますが、元々は製造時に塗布されたグリスです。このグリスが経年により乾いて固まったことにより、切り替えシステムが動作せず不具合が生じています。
しかし、レバーの固着だけが不具合の原因ではありません。指で触っているのがそのレバーにより動作する録音・再生切替用スイッチです。ここに触れると再生音が変化し、出力不良であった左CHも正常になりますので、接触不良が起きていることがわかります。
そして先ほどのスイッチの間にあるのが、FWDとREV切り替え用スイッチです。ここにも接触不良が起きているため、REV走行ができないと考えられます。
そこで、スイッチの隙間から接点復活剤を注入します。ただし、先ほどのレバー固着を解消しなけれスイッチが切り替わりません。
基板を取り外すと、操作スイッチに連動したレバー類が現れます。2枚目写真の上のレバーが録音再生切替、下が走行方向切替用です。
先ほどのグリス硬化により、このパーツが固着していますので、分解し、清掃&グリスアップを行います。
これでリバース再生も可能となりましたが、速度がすぐに低下し止まりそうになります。どうやらキャプスタンベルトがスリップしているようです。
このデッキは、メカを降ろさずにベルト交換が可能です。背面のジェットエンジンのような巨大なモーターとコンデンサーが取り付けられているパネルを取り外し、
メカに付着した汚れで指が見苦しいことになっていますが、表面がスベスベになった古いベルト(折長120mm)を交換します。その隣のリールベルト(折長60mm)も一緒に交換します。
走行が勝手に停止するのも、リールの回転を検知するためのベルトスリップが原因です。しかし、メカに入り組んでいるため、簡単には交換できません。
カウンターの後ろのプーリーにベルトが掛かっていますので、一旦カウンターを取り外し、ベルト交換(折長120mm)を行います。ついでに動きの悪いカウンターにグリスアップを行います。
続いてピンチローラーです。
表面がツルツルになっていますが、特殊なサイズで入手不可ですので表面を研磨し専用クリーナーで処理します。
録音状況のチェックを行うと、右側がまったくダメでした。回路の故障でしょうか?
ダメもとで、機器の内部からVOLの隙間に接点復活剤を注入し、VOLを何度か左右に回します。
無事復活しました。
調整に移ります。315Hzのテープを再生して速度の点検を行いましたが、2%以上の狂いがあります。モーターが温まってもこの状態です。この機種は速度調整ができない仕様となっていますが、このままでは使用上問題があります。
キャプスタンモーターのプーリー部分に少し手を加えます。詳細は企業秘密です。
ほぼジャストとなりました。
続いてヘッドアジマスです。FWDとREVの両方調整を行うのですが、
ほとんど狂いは無く、許容範囲内ですが、調整ネジを回しても変化がありません。
どうやらヘッドの可動部が固着しているようです。ここを分解することは非常にリスクを伴いますので、今回は処置は行いません。
入出力バランス調整を行います。
操作レバーの錆を除去します。
FWDからREVに切り替えるとヘッドが前方にスライドするという珍しい方式を採用しています。
完成しました。