AKAIのヴィンテージデッキ、GXC-709Dの修理依頼をいただきました。
2ヘッドシングルキャプスタンと当時のオーソドックスな仕様で、木製のキャビネットを採用し雰囲気のあるデザインです。
不具合は大きく2点です。1点目は、テープ走行不良です。一応再生できましたが、時間の経過につれて速度が低下し、最終的には停止してしまいます。
2点目は、稀に片チャンネルが出力されないということです。現状でも再生音量のバランスが悪い状況です。稀に発生する不具合の原因究明は困難な場合が多いのですが、接触不良が原因と思われます。
カバーを開けます。基板上のこの細長いパーツが、再生と録音を切り替えるスイッチです。この隙間に接点復活剤を注入します。
そして、誤消去防止用の爪が折れていないテープをセットし、RECボタンとSTOPボタンを繰り返し押下します。スイッチの接点に接点復活剤が行き渡り、接触が改善されます。
これで先ほどよりも状態は改善されました。調整は後ほど行います。
この機種は、メカの背部に走行系のパーツが集約されていますので、メカを降ろさずにメンテナンスが可能です。
キャプスタンベルがスリップしています。既製品ではピッタリのサイズは見つかりませんので、類似サイズのものを発注します。
このフライホイールを固定しているビスを緩めるためには、一見、背後の電源基板が邪魔なように見えますが、
本体のリヤパネルを外して、電源基板の下から長いドライバーを差し込んで緩めることができるように設計されています。
フライホイールを引き抜くと、アイドラーやリールを脱着することができます。
アイドラーが3ケ、左右リールにそれぞれ1ケ、計5ケのゴムリングが使用されています。弾力がありますので、劣化している表面を研磨し、専用クリーナーで処理します。
それと、折長65mmのゴムベルト1本を交換します。
注文していたキャプスタンベルト(手前)が到着しました。
しかし、取り付けて再生すると、テープ速度が調整しきれないほど異常に遅くなりました。モーターのトルクが弱いということもあると思いますが、少しきつめのベルトですので、モーターに負荷が掛かりすぎたようです。しかし、現状で入手できるベルトではこれ以上マッチするものはありません。
結局、元々付いていたものを、表面を研磨し専用クリーナーで処理して再利用することとなりました。
速度は正常になりましたが、今度は巻き戻しが不調です。
メカを覗き込むと、先ほど交換した65mmのベルトが、左側リール用のプーリーのところでスリップしています。ワンサイズ小さめのものに交換し、正常に作動するようになりました。
機器が十分温まったところで、315Hzのテープを再生して速度の調整を行います。
ヘッドアジマスに狂いはありません。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生してバランス調整を行います。
数種類のテープで録音再生テストを行い、完成です。