今日の修理は、これまで何度かお取引いただいているお客様からのご依頼です。
SONYのカセットデッキTC-FX7です。テープの冒頭で音が籠ったり、テープがワカメ状になったりという不具合を抱えているということです。テープの再生位置によって不具合が起こるのは、テープテンションに問題があると思われます。
薄型のデザインにもかかわらず、テープは直立でセットします。通常、このサイズでは、水平ローディングになると思われますが、ヘッドやピンチローラーはどうなっているのでしょうか?
テープの最初と最後ではテープの巻き取り量の違いにより、テープに掛かるテンションが変化します。そこで、まずはリールのトルクを調べます。予想通り、バックテンションはほぼゼロを示しています。そのため、テープが進行方向と垂直方向に振れて上記のような症状が起こります。
カバーを開けると、裏にメカの取り出し方法とヘッドアジマスを調整する際の分解説明が記されていました。親切ですね。
図解どおりに、フロントパネル、電源ボタン、電源スイッチの順に取り外し、
メカを取り出しました。キャプスタンはクォーツロックのDDモーター仕様です。
カセットハウジングの化粧パネルを取り外します。ヘッドとピンチローラーはスペースの関係上、かなりコンパクトに纏められています。
左側リールの下に見える白色のレバーがバックテンションを掛けるブレーキです。しかし、ブレーキパッドが接触するリールの表面が長年かけてパッドでツルツルに磨かれて、ブレーキがほとんど効きません。
指差ししているスプリングはブレーキパッドをリールに押し付けるためのものです。バネを掛ける位置を変更して強さを調整します。なお、あまりバックテンションが強いと、テープ終盤で音揺れが発生しますので十分な確認が必要です。
また、コントロール基板のトリマを回してリールの巻き取りトルクを調整します。何度か試行錯誤を繰り返し、不具合が解消されました。
テープセレクターは手動ですが、TYPE1でランプがちらつきます。スイッチの隙間から接点復活剤を注入します。
調整に移ります。ヘッド周りにアクセスできるよう、操作パネルを取り外します。
キャプスタンはクォーツロックですので調整はできませんが、点検を行います。許容値内に収まっています。
ヘッドアジマスの調整を行います。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生し、入出力バランス調整を行います。
長尺テープ数種類で走行テストを念入りに行います。最後に聴感テストを行い修理完了です。