SONYのDATデッキ、DTC-ZE700の修理依頼をいただきました。
CAUTION表示となり、テープが取り出せなくなったということです。グリスの固着、あるいはテープガイドのレール変形が疑われます。
また、時折左CHから音が出ないことがあるという不具合も抱えています。
トレイリッドのアクリル製の窓が外れかけています。一旦剥がして両面テープで貼り付けます。
カバーを開けました。テープガイドが上がったままです。
手動でトレイを動かしてテープを救出します。
カセットホルダーを切り離します。
一瞬、「ピンチローラーが無い!」と思いましたが、外れてすぐ横に挟まっていました。それでメカが動かなくなったようです。プラスチック製の留め具が割れてピンチローラーが脱落することはよくあることですが、それがメカに挟まって動かなくなるというのは非常に珍しい故障です。
表面を軽く研磨し、専用クリーナーで処理します。留め具としてビニールチューブで固定します。
カセットホルダーは、グリス切れで動きが悪くなることがありますので、プラスチック同士が擦れる箇所にシリコングリスを塗布します。
テープ検出スイッチの隙間から接点復活剤を注入します。
メカを裏返して、基板、リールユニットの順に取り外していきます。
テープガイドを駆動するギヤを固定しているプラスチック製の留め具が割れて今にも外れそうになっています。Eリングに置換します。
リールユニットです。先日の57ESと同様、左側のブレーキパッドが脱落しています。
テープガイドを駆動するギヤを脱着してシャフトにグリスを塗布します。
リールとブレーキを取り外します。
ブレーキパッドを弾力性のある接着剤で貼り直します。
ここはZE700のウィークポイントです。ソレノイドを固定しているビスが緩んでいます。このままでは間違いなく不動になりますので、締め付けてネジロック剤を施します。
元通り組み立てて、接着剤が乾くのを待って動作テストを行います。
動作はOKになりましたので、左チャンネル不具合の点検を行います。可能性があるのは、出力端子の半田割れです。基板を取り外し、拡大鏡で点検します。
半田割れが見つかりましたが、アースです。ここが接触不良になれば両CHに影響が出るはずですので、関係はありません。一応半田を盛っておきます。
長時間の動作確認を行いますが、不具合が再現されない場合は修理できません。また、DATデッキそのものではなく、接続状況やアンプの問題ということも考えられます。ところが、テストを行っているときに別の不具合が見つかりました。LONGモードで録音されたテープを再生していると、時折変な調子になります。具体的には、普通「タ・タ・タ」と再生されるところが「タ・タラッ・タ」とか「タラッ・タ・タ」といった調子です。
しかし、ピンチローラー、RFユニットなどを別なものと交換しましたが症状が改善されませんでした。残るはヘッド、基板、キャプスタンモーターをのどれかです。
ヘッドと基板の在庫はありませんので、キャプスタンモーターを交換します。
無事、不具合が解消されました。
入出力別、モード別の録音再生状況を確認します。
結局、最後まで左チャンネルの不具合は再現されませんでしたので、これで修理完了です。