KENWOODの3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、KX-1100Gの修理依頼をいただきました。
「カウンターが点灯するまでに数分掛かる」「再生ボタンを押しても無反応」「再生できてもテープが絡む」などの不具合を抱えています。
電源をONにしました。期待に反し?カウンターは点灯しましたが、これまでの事例から、電源回路の不具合が疑われます。
トレイを閉めようとすると、よじれてしまいます。どこか破損しているのでしょうか?。
再生ボタンを押すとテープが走行しましたが、右側リールの回転が即停止しました。それでもキャプスタンは回転を続けていますので、テープがどんどん引き出されます。取り出したテープは写真のとおりです。
カバーを開けます。リールモーターのピニオンギヤをドライバーで突くと、モーターが回転しだしましたので、モーターの内部接点に接触不良が起きていることがわかりました。
フロントパネルを取り外し、メカを降ろします。比較的最近に手を加えられたような形跡が伺えます。
本体内部から小さなプラスチック片が出てきました。これは何かというと、
カセットホルダーを切り離します。左側のガイドピンの先端が破損した破片でした。これが原因でトレイがよじれていたようです。修理するためには少し加工が必要です。
破損した箇所にドリルで穴を開け、ビスをねじ込みます。動作確認は最後に行います。
メカの点検を行います。左側リールのバックテンション用ベルトが消失しています。
折長40mmのベルトを掛けます。
メカを前に倒し、リールモーターの修理に取り掛かります。
モーター背面の基板、プレートを分解します。
ブラシと整流子が酸化して黒くなっています。
目の細かいサンドペーパーで磨きます。
アイドラーを一旦取り外し、モーターに負荷が掛からない状態で直接電圧を印加し、接点の慣らし運転を1日程度行います。
慣らし運転の間に電源回路の修理を行います。赤いマーキングをしているのが、劣化している、あるいは劣化しやすい電解コンデンサーです。
この機種の基板修理は大変です。ディスプレイ基板や背面のパネルなどを切り離し、ほとんど全分解状態にします。
先ほどのコンデンサーを新品交換します。
ヘッド周りの点検を行います。
表面が劣化しているピンチローラーを脱着し、研磨清掃を行います。
テープをセットしたことを検出するスイッチの接点を清掃します。
カムの動きを検知するスイッチを脱着して清掃します。
最後にテープポジション検出スイッチの接点を清掃します。
キャプスタンモーター基板を取り外し、
キャプスタンシャフトにグリスアップします。
メカを本体に組み込んで動作テストを行います。トレイ開閉は正常に戻りましたが、少し誤作動が起きます。何が原因でしょうか?
時間を要しましたが、このカムギヤのガタツキが原因です。どうやら以前整備された方がキチンと組み立ててなかったようで、差し込み部に問題がありました。手戻りになりますが、一旦メカを降ろして分解組立を行います。
315Hzのテープを再生して速度の点検を行います。わずかに遅い状態です。
モーター基板の半固定抵抗で調整します。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生モニターしバランス調整を行います。
複数のテープで動作確認を行い、修理完了です。