SONYのDATデッキ、DTC-77ESの修理依頼をいただきました。
5年ほど前から音が出なくなる症状が起きたということです。メーカーでは「部品が無い」ということで、ヘッドクリーニングのみで返品されたということです。
故障前に録音したというテープもお送りいただきました。
テープをセットして再生テストを行います。テープは走行しますが、確かに読み込みできません。また、ローディングも不調で10回に1回程度しか成功しません。
カバーを開けて点検を行います。可動式テープガイドの動作不良はありません。
ヘッドチップの状態を拡大鏡を用いて点検します。すると、酷い汚れが付着していることが確認できました。何かは分かりませんが、これまでも見たことのある、シールの接着材のようなベタベタした汚れです。爪楊枝を用いて、その汚れを直接そぎ落とします。そして、クリーニングテープを長めに走らせます。
無事音が出るようになりました。皆さんは「メーカーサービスなら間違いない」とお思いでしょうが、私の経験上、機器の開発者ならともかく、メーカーサービスではマニュアルに書いてある通りのことしかできませんので、意外と当てにならないものです。
メカを降ろしてカセットホルダーを切り離します。
可動式テープガイドのレール部には製造時にグリスが塗られています。
テープローディングにトラブルが起きたときにそのグリスがテープや周囲に飛散しますので、アルコールで拭き取ります。
ヘッドを痛める純正のスポンジ製ヘッドクリーナーは既に消失しています。不要となったヘッドクリーナーのアームを撤去します。
ヘッドドラム部にも汚れが付着していますので、拡大鏡を用いで清掃を行います。
ピンチローラーの状態は良好です。
メカを裏返して分解を進めます。
リールおモーター、キャプスタンモーター、ギヤ類を取り外します。
リングギヤの可動部は固着寸前です。古いグリスが固まりかけています。
CRCで除去し、シリコングリスを処置します。
ベルトを新品交換します。
2DDリールメカです。ブレーキパッドが剥がれて貼り付いています。
ブレーキ部を分解します。
パッドを張り替えます。
元通りに組み立てます。
本体に仮接続して動作確認を行います。
ヘッドの信号を処理するRFアンプです。
液漏れしやすい電解コンデンサーは既に交換済みでした。
フロントパネルを切り離します。
リモコン受光基板です。10μFの電解コンデンサーが液漏れしています。
交換します。
ディスプレイ基板です。
10μF、
100μF、
100μF、
100μF、計4ケの液漏れしているコンデンサーを交換します。
モード別、入出力別の録音再生状況を確認し、
最後にオーナー様が録音されたテープの再生状態を確認し、修理完了です。