今日はPIONEERの3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、CT-970の修理を行いました。
不具合の状況ですが、以下のとおりです。
1 電源スイッチを投入後,しばらくしないと再生ボタンが働かない。再生自体は可能。
2 カセットドアを開けたときに「バタン」という感じで勢いよく開く。
3 最近,早送り時のトルクが不足気味となり,早送りではテープが完全に巻き取られないようになってしまった。
2についてはダンパーゴムの劣化、3についてはアイドラーゴムの劣化が原因であると目星を付けましたが、1については、当初、ミュート回路の不具合ではないかと考えていました。
しかし、テープをセットして動作確認を行うと、ヘッドとピンチローラーの動きが悪いことが原因であることがわかりました。正常に動作するまでに時間が掛かるということは、グリス硬化が疑われます。
カバーとフロントパネルを取り外します。
メカを本体から引き出します。
メカの点検を行います。ピンチローラーアームとヘッドを指で押し上げると、動きが重く元の位置まで戻るまで相当時間が掛かります。
ドライバーで指している辺りが固着していますので、注油を行います。
動きが滑らかになりました。
続いて走行不良の修理です。
硬化しスリップの原因となったアイドラーゴムを交換します。
左右リールの真下にあるブレーキ用ゴムです。硬化して、ブレーキが掛かる際に「キュルキュル・・・」と耳障りな音を発していますので、シリコンゴムと交換します。
動作良好になりました。
キャプスタンベルトは過去に交換済みのようで、問題はありません。
メカ左側にトレイ開閉のダンパーがあります。スリーブを取り外します。
ダンパーのピストン部を取り出しました。
ゴムリングを脱着してシリコングリスを充填します。
シリンダーも内部を清掃後にグリスを充填します。
開閉状態を確認します。ゆっくり開いたりそうでなかったりといった状態ですが、ゴムリングが摩耗しているためやむを得ません。
再生テストを行います。VOLにガリが見られますので、接点復活剤を処置します。
315Hzのテープを再生して速度の点検を行います。普通は0.3Hz程度上下しますが、ピタリと315Hzで止まってブレがありません。
ヘッドアジマスを調整します。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生モニターしてバランスの調整を行います。
複数のテープで録音再生状況を確認し、完成です。