TASCAMの業務用3ヘッドカセットデッキ、122mkⅢの修理依頼をいただきました。
再生ボタンを押すと、「ウイーン」という音と共に、緑黄赤ランプが点灯します。
カバーを開けてメカを取り出します。
キャプスタンはDDモーター仕様になっています。基板上の電解コンデンサーは交換済みです。
メカを前方に倒して、カムモーターを取り外します。
キャラメル色のギヤが欠けています。
取り外し時にバラバラになってしまいました。このギヤが欠ける理由は二つあります。一つ目は、経年劣化しやすい材質で製造されていることです。もう一つは、シャフト部に塗られたグリスが固まったことです。ギヤが回転できない状態で、モーターの力が加わり破損に至ります。
シャフト部には固まったグリスが付着していますので、アルコールで清掃し、シリコングリスを処置します。
大きなギヤはヘッドとピンチローラーを上下するためのカムと、メカの動作状況を検知するロータリーエンコーダーを兼ねていますが、ここもグリスが固まり回転が非常に重くなっています、
脱着して先ほどと同じ処置を行います。
ロータリーエンコーダーをの接点を清掃し、スライド接点専用グリスを塗布します。
新しいギヤを取り付け、元通りに組み付けます。
続いてアイドラーの交換を行いますが、この機種は、キャプスタンモーターを取り外す必要がありますので、右写真の六角ナットを緩めます。
キャプスタンモーターを取り外しました。
これでリールユニットを脱着することができますので、アイドラー交換を行います。
ピンチローラーは表面を軽く研磨し、専用クリーナーで処理します。
メカを組み立てて、本体に戻して走行テストを行います。
315Hzのテープを再生して速度の点検を行います。かなり狂いが見られます。オーナー様に修正の是非について確認を行い、
左側のラックマウント金具を取り外し、そこに現れた半固定抵抗を回して調整します。上がピッチコントロールOFFです。
続いてピッチコントロールをON、ツマミをセンターの状態で調整を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生モニターしてバランスと録音ヘッドのアジマス調整を行います。
聴感で録音再生モニターすると、RCHの音が少し籠り気味であることがわかりました。
315Hz、1000Hz、10000Hzの信号を入力し、それを録音再生モニターします。
左CHはおおむねフラットですが、右CHは10000Hzの出力が低下します。録音ヘッドか回路の劣化が原因と思われますが、修理は困難ですので、バイアスで対応できる範囲で調整を行います。
複数のテープで録音再生状況を確認し、修理完了です。