当店で以前AKAIのカセットデッキを修理されたお客様からのご依頼です。
NakamichiのLX-3です。10年ほど前に中古購入し、その後2度ほど修理をされて現在に至っているということですが、以前から音が籠っているのが気になっていたということです。今回は通常のメンテナンスも併せて行います。
テープ走行に大きな不具合はありません。しかし、この機種は、常時キャプスタンが回転しているタイプではなく、再生開始と同時に回転が始まるのですが、テープ速度の立ち上がりが少し遅く、音が出た瞬間はまだ一定の速度になっていません。キャプスタンベルトのスリップが原因と思われます。
音が籠るということですので、周波数特性を点検します。315Hz、1000Hz、10000Hz、12500Hzの信号が同レベルで記録されているテープを再生します。やはり高域帯の10000Hz、12500Hzの出力が大きく減衰しています。
ヘッドアジマスの点検を行います。大幅な狂いです。これではNakamichiも実力を発揮することができません。
調整を行います。
高域が大幅に向上し完璧な状態になりました。続いてメカのメンテナンスを行います。
カバーを開けます。
メカから基板に繋がっている「録音-再生」切替用のワイヤーを切り離します。
コネクタ類も切り離し、
フロントパネルを取り外し、
メカを取り出します。
背面と上面です。フラッグシップモデルのDRAGONなどと同じサイレントメカが搭載されています。メカは3層のプレートで構成されています。
1層目のキャプスタンモーターの取り付けられているプレートとフライホイール、キャプスタンベルトを取り外します。
2層目のリールユニットが取り付けられているプレートを取り外します。
リーフスイッチの接点を清掃します。
アイドラーを分解し、特注のゴムリングと交換します。このメカのウイークポイントは、アイドラーを支えるプラスチック製のレバーが変形し、アイドラーが不安定になることですが、このメカは金属製のレバーになっています。対策品でしょうか?
異音防止のため、左右リールを分解し、シャフト部にグリスアップします。
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布します。
キャプスタンベルトの表面は、劣化によりスベスベになっていますので、新品と交換します。
モードベルトは、数年前に交換されたということで状態は良好でしたが、折角の機会ですので交換します。
メカのフロント部に移ります。
リールの回転を検知するユニットを駆動するベルトを交換します。
カセットホルダーを切り離し、ヘッドブロックを取り外します。
ピンチローラーアームに固着が無いか点検します。
ピンチローラーは入手できないサイズです。状態は良好ですので表面を軽く研磨し専用クリーナーで処理します。
リーフスイッチの接点を清掃します。
メカのメンテナンスが完了しましたので、本体に戻して動作確認を行います。再生開始時の立ち上がりの問題も完全に解消されました。
調整に移ります。315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の調整を行います。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生してバランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープを用いて録音再生状況を確認します。
完了しました。メンテナンス前とは完全に生まれ変わりました。Nakamichiの本領発揮です。