AKAIのオートリバースカセットデッキ、GX-F66RCの修理を行いました。
40年ほど前に新品購入されたデッキということですが、最近再生ができなくなり当店にご依頼をいただきました。
オーナー様からは、発送前の点検では早送りや巻き戻しもできなくなったとご連絡をいただきましたが、到着して確認すると、緑色のテープポジションの表示ランプが点灯しているのみで、カウンターやメーターも表示されません。
カバーを開けて点検します。
電源基板です。ヒューズが切れています。
とりあえずヒューズを交換します。ひとまず電源は入りメーターやカウンターも表示されるようになりました。しかし、すこしなにかが焼けるような匂いがします。ヒューズが切れたことと関係があると思われます。
キャプスタンが回転しませんので、フライホイールを指で回してみます。しかし、モーターのプーリーが回転せず、ベルトがスリップしています。モーターの軸受け部が固着しているようです。そのため、モーターに過電流が流れて加熱し、さきほどの匂いが発生したようです。
サービスマニュアルで確認すると、モーターはEG-510ED-2Fという形式ですが、モーターの取り付け方向が通常とは逆ですので、一般的なカセットデッキに使用されているものとは回転方向も逆です。モーターにはプラスとマイナスの接続を変えると逆回転するものもありますが、このモーターには回転数制御回路が内蔵されているため、回転方向は変更できません。
回転数は2400、電圧は12Vということで特に特殊ということはありませんが、回転方向が異なるため互換モーターがありません。
一旦は修理不可ということでオーナー様にご連絡しましたが、諦めきれずネットで検索を行っていると、海外のサイトで新品のモーターが販売されていることが分かりました。オーナー様にその旨ご説明をし、モーターを発注します。
ブルガリアから3週間ほどかけてモーターが到着しました。
修理に移ります。まずはフロントパネルを取り外します。
メカは、底面4か所、
上面1か所、
スイッチ基板を固定しているビス2本を外すと、後ろ側に2本のビス、計7か所で固定されています。
メカはケーブルが半田付けされている箇所が多いため、取り出すことはできませんので、写真のような窮屈な状態で作業を進めます。メカ背面の基板とバックプレートを取り外します。左側のサイドパネルの脱着も必要です。
フライホイールを引き抜き、リールユニットを取り出します。リール間のアイドラーゴムを交換します。
元々付いていたものは、硬化していて割れてしまいました。
リールユニットの裏側にもアイドラーが2ケ(ゴムリングは4ケ)あります。
ゴムリングを交換します。小さいものは外径13mm、大きいものは、以前TEACのデッキを修理した際に特注した、外径が23mmのものがピッタリです。
このメカは、不用意に分解すると、組み立てに失敗しますので、事前の十分な観察が必要です。特に、リールユニットを組み付ける際は、レバー類との位置関係に注意が必要です。
カウンターベルトを交換します。
問題のキャプスタンモーターです。やはりシャフトが固着しています。
交換します。後で説明しますが、モーターの取り付け角度に注意が必要です。
ピンチローラーアームを脱着し、ゴムを研磨清掃します。左右とも行います。
メカを組み立てて本体に戻します。再生OKですが、ハウジングランプが点灯しません。
また、フォワード側の再生方向を示すランプも切れています。ランプの根元を触るとチカチカと点滅しましたので断線しているようです。
電圧は18Vです。LEDと1kΩの抵抗を組み合わせて代用品を作成し取り付けます。
こちらはハウジングランプです。
電圧は5Vです。先ほどと同様、LEDと470Ωの抵抗、そして光を拡散させるためのストローを組み合わせて代用品を作成し取り付けます。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
正面から見ると、左下の隅にキャプスタンモーターの背面が見えます。そこに調整孔がありますのでドライバを差し込んで合わせます。モーターの取り付け角度を間違えると、この穴が隠れてしまい調整ができません。
ツマミ類に錆が浮いています。できる限り除去します。
録再バランスを調整し、
フォワード、リバースの録再状況を確認し、
完成です。