これまで何度かお取引いただいている方からのご依頼です。
Nakamichiの3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、CR-40です。
テープ終盤で、テープがワカメ状になることがある、ということです。テープの序盤と終盤では、テープの巻き取り量の関係からテープのテンションが変化しますので、バックテンション、またはピンチローラーに原因がありそうですが、動作確認では、条件の悪い150分の長尺テープでも不具合は再現できませんでした。しかし、経験上、テープのメーカーや種類によって、症状が出たり出なかったりすることは決して珍しいことではありません。
カバーを開けてメカを取り出します。今回は、通常必要となるメンテナンスも併せて実施します。
カセットハウジング内の化粧パネルを取り外し、メカを点検します。予想通り、バックテンション用のベルトが無くなっています。
整備しやすいよう、カセットホルダーを切り離します。
リールを取り外します。加水分解で溶けたベルトが絡みついています。
こちらにも巻き付いています。
綺麗に清掃し、新しいベルトを掛けます。
ピンチローラーアームを脱着するため、ヘッドブロックを切り離します。ここは、組み付け方が非常に特殊です。組み方をご存じでない方は、元に戻らなくなりますので決して分解しないでください。
ピンチローラーアームを取り外しました。左側は調整式になっていますので、事前に元の位置を測定しておきます。
ゴムの部分はは十分弾力がありますので、表面を軽く研磨し、専用クリーナーで処理を行います。
カセット検出スイッチの接点を清掃します。
メカの背面です。
カムモーターユニットを切り離します。
このモーターは、動作の切り替え時しか回転しませんので、通常の使用では出番が少ないため、内部接点に接触不良が起きやすいことで知られています。直接電圧を加えて、無負荷・高速回転状態で半日以上放置します。これで内部接点が自己回復します。
カムモーターでONOFFするスイッチの接点を清掃します。このメカの最大のウイークポイントです。
モーター基板、フライホイールをを取り外し、
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布し、新しいベルトを掛けて組み立てます。
誤消去防止孔検出スイッチの接点を清掃します。
元通りに組み立てて、本体にメカを戻します。走行OKです。
調整に移ります。ピンチローラーアームを脱着した後は、テープが一直線に走行していることを点検する必要があります。ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視で点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
モーター基板上のトリマを回して調整します。
再生ヘッドのアジマスにはほとんど狂いは見られませんでした。
続いて録音ヘッドのアジマスを点検しましたが、すこし狂いが見られます。この状態でどの程度の性能を有しているか確認するため、315、1000、10000、16000Hzの4種類の信号をINPUTに接続します。
周波数の異なる4種類の信号は、レベルが同じです。しかし、それを録音再生してみると、
高域が減衰しています。
録音ヘッドのアジマスを調整しました。高域の出力が先ほどより伸びているのが分かると思います。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生モニターしてバランス調整を行います。
テープポジション別に調整を行います。
最後に聴感で音質を確認し、修理完了です。