A&Dの3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、GX-Z7100です。
オーナー様のお話では20年以上前に故障し、そのままの状態だったということです。
電源を入れると、モーターが回転する大きな音が2・3秒続き、トレイが勝手に開きます。
テープガイドが左右とも破損しています。テープが閉じ込められた状態でトレイを無理に開けるとカセットと接触するため破損しますが、左右ともというのは珍しいケースです。
カバーを開けました。ケーブルの束ね方を見る限りでは修理歴は無いものと思われます。
メカを降ろしました。カセットホルダーが外れかけています。
機器内部に破損したテープガイドが転がっていました。右は正常なものです。
カセットホルダーを化粧パネルを取り外します。
ホルダー内蔵のスプリングを脱着し、
加熱整形します。
メカの状態を点検します。左側のピンチローラーアームが固着して動きません。
製造時に処置されたグリスが固まっています。
固着していたピンチローラーアームを取り外したところです。シャフトに塗られたグリスが乾いています。
ピンチローラーの表面を軽く研磨し専用クリーナーで処理します。
破損したテープガイドを交換します。
ヘッド周りのパーツを取り外しました。
ヘッドブロックは、スチールボール3点で支えられているのですが、
そのうち1か所のボールが消失しています。テープガイド破損時に脱落したものと考えられます。
右側のテープガイドです。ナットがネジロック剤で固められています。これをそのまま回すと、シャフトがねじ切れますので、ネジロック剤を除去しながら慎重に作業を進めます。
交換します。
スチールボールには、シリコングリスを処置し、脱落防止を図ります。
ピンチローラーアームの動きがスムーズになりました。
リールとアイドラーを取り外します。
左リールのブレーキは、脱落防止対策品が取り付けられていました。
ゴムリングが当たる面を清掃します。
アイドラーゴムを交換します。
メカ背面の基板を取り外します。
異音を発していたカムモーターを交換し、新しいベルトを掛けます。
テープポジション検出スイッチの接点を清掃します。
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布し、新しいベルトを掛けて組み立てます。
ここで、テープガイドが破損する仕組みを解説します。この写真は、トレイが開くときのヘッドとテープガイドの位置です。テープガイドは下に下がりますので、カセットはスムーズに取り出すことができます。
これは、テープがセットされたときの状態です。少しヘッドとピンチローラーが上がり、テープガイドはカセットハーフの内部に入り込んでいます。この状態で電源を切っても、ヘッドやピンチローラーは動きません。そして、カセットテープがセットされたまま、長期間不使用状態が続くと、ピンチローラーアームのグリスが固まって、ヘッドもピンチローラーも下がることができなくなります。もちろんトレイは開きません。それを無理にトレイを開けようとすると、カセットテープがテープガイドに引っ掛かって破損します。
元通りにメカを組み立てて、本体に戻します。
テープ走行はOKです。
テープガイドを脱着した後は、テープパスの点検調整が必須となります。ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視で確認します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
左右同レベルの信号を入力し、それを録音再生モニターしてバランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープを用いて録音再生状況を確認し、完成です。