珍しいカセットデッキの修理依頼をいただきました。
TEACの2ヘッドシングルキャプスタンデッキ、f-500mkⅡです。1979年頃に発売された製品です。
オーナー様が最近購入されたという機器ですが、最初は動作したものの、すぐに不動となったということです。
カバーを開けました。シングルモーター仕様です。
キャプスタンベルトが脱線しています。ベルトが伸びて緩んだのが原因と思われます。
メカを降ろしました。
化粧パネルを取り外します。
アイドラーゴムは、弾力がありますので、専用クリーナーで処理し再利用します。
カウンターベルトを交換します。
ピンチローラーを交換します。
左右リールのアイドラーが面する箇所を清掃します。
メカ背面です。キャプスタンモーターのプレートを取り外します。
フライホイールを取り外します。写真に写っているベルトは、フライホイールの回転をリールに伝達するリールベルトです。それにしても4つ並んだソレノイドが壮観ですね。
伸びたベルトは交換します。
ヘッドの表面に錆が浮いていましたので、ザラツキがなくなるまで磨きます。
メカのメンテナンスが終わりましたので、本体に組み込んで動作テストを行います。音は出ましたが、OUTPUT-VOLにガリが見られます。
底板を取り外し、VOLにアクセスします。隙間から接点復活剤を注入します。
録音を試します。しかし、録音中は音が出てメーターも振れますが、再生してみると無音状態です。この機器の回路図はありませんので、ピンチです。それでも何度か録音を繰り返すと、片CHのみ録音できるようになりました。ということは接触不良が原因と考えられます。
バイアスとイコライザーの切り替えスイッチの隙間に接点復活剤を注入し、スイッチを何度か動かすと、左右CHとも録音が正常になりました。
調整に入る前に、モーターの暖機運転のため、いつも聴いているテープを再生しました。すると、途中から不規則に速度が変化しだしました。また、早送りでは、テープ終盤で走行が途中で停止してしまいます。モーターの故障でしょうか?
時間が掛かりましたが、原因を突き止めました。フライホイールを押さえる部分は調整式になっているのですが、ここが少しきつめになっていて回転に負荷が掛かっていたようです。再生を開始したときの速度の立ち上がりが少し遅いことが解決のヒントでした。これまで数百台以上カセットデッキを修理してきましたが、ここを調整したのは初めてです。古いデッキには想定外のトラブルが発生します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
バランス調整を行い、
複数のテープで録再状況を確認します。バイアスは固定ですのでテープを選びますが、良好な状況です。
完了です。