近郊にお住まいの方からご依頼をいただきました。
ナカミチのCR-70です。初めて取り扱いする機種になりますが、事前のリサーチにより、これまで何度も修理してきたSANKYO製のメカが搭載されているということがわかりました。
リッドが開かないためテープが閉じ込められています。もちろんメカは無反応です。
カバーを開けます。この機種には、アジマス調整機能が備えられています。DRAGONがオート調整であるのに対し、CR-70はメーターを見ながら手動で調整を行います。内部が詰まっているのは、アジマス調整機能やオートキャリブレーション機能に関係していると思われます。
フロントの化粧パネルを取り外すと、リッドを脱着することができます。
メカはギリギリで取り出すことができます。
テープを取り出すために、カムモーターに直接電圧を印加しメカを強制的に動作させます。
メカのベースは、下位機種のCR-40などと同じですが、メカの右側にアジマス調整ユニットが付加されています。
カセットハウジング内の化粧パネルを取り外します。バックテンション用のベルトに撓みが見られます。
加水分解によりベルトが溶けています。新しいベルトに交換します。
異音防止のため、左右リールを脱着し、グリスアップします。
カセットホルダーを取り外し、
ピンチローラーやヘッドを専用クリーナーで清掃します。
メカ各所の接点を清掃します。
メカ背面の基板を取り外し、
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布し、新しいベルトと交換します。
テープポジション検出スイッチの接点を清掃します。
この段階で一度動作テストを行います。しかし、メカがうんともすんとも動きません。
ヒューズが切れていました。交換します。
ようやく動作するようになりました。
アジマス調整ツマミを回すと、カムギヤが動き、ヘッドアジマスを調整します。調整はメーターを見ながら行います。左右チャンネルに含まれる特定の周波数のズレを検知するという画期的な発想により開発されたシステムです。
ここでトラブル発生です。再生時には気が付きませんでしたが、録音再生モニターを行うと、音が揺れています。
ここは想定外でした。左右ピンチローラーにキャプスタンが押し付けられた窪みができています。ピンチローラー清掃時にも気が付きませんでしたが、故障したときの状況が、再生状態でのヒューズ切れで停止したため、このような状態になったものと考えられます。
再度メカを降ろします。ヘッドブロックを取り外します。
右側です。
左側です。
この状態でテストします。音揺れは解消されました。
カセットホルダーがロケットオープン状態となっていましたが、ここのゴムリングは特殊な形状のため交換できません。ところが、クリーナーで清掃を行ったところ改善が見られました。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
調整後です。
再生ヘッドのアジマスは調整不要ですので、録音ヘッドのみ調整を行います。
バイアスとレベル調整はオートで便利ですが、古いテープなどで状態にむらがある場合は、調整に幅ができてしまいますので、音質に違和感を感じたときは、テープの状態の良いところでキャリブレーションを行う必要があります。
複数のテープで録音再生状況を確認し、完成です。