以前、当店でKX-1100Gを修理されたお客様から、今回は同じKENWOODのKX-9010のご依頼をいただきました。
再生不可ということでしたが、動作確認時は再生可能な状態でした。ただし、テープ走行が不安定で、「クシャクシャ」という音と共に、テープにシワができてしまいます。
カバーを開けました。過去の修理の形跡が伺えます。
カセットハウジング内です。左リールの隣に手裏剣のような形状のものが見えますが、これはバックテンションを掛けるためのパーツです。
左リールを回すと一緒に回転するはずですが回りませんのでベルトが切れているようです。そのためテープテンション異常によりテープにシワができたものと考えられます。
メカを降ろしました。このメカでは、モーターの接触不良が起きやすいため、必ず行わなければならないことがあります。
アイドラーギヤを取り外します。
カムギヤのユニットを切り離し、ギヤを取り外します。
これでリールモーターとカムモーターが無負荷状態になりましたので、両方に直接電圧を印加し、半日程度高速で空転させます。これにより内部接点の接触が回復します。
カムによりONOFFするスイッチ、テープ挿入を検知するスイッチの接点を清掃します。
リールを取り外すと、溶けたベルトが巻き付いていました。
綺麗に清掃し、回転部分にグリスを処置し、新しいベルトを掛けます。
モーター基板、フライホイールを取り外します。
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布し、新しいベルトに交換します。
テープポジション検出スイッチの接点を清掃します。
メカを本体に戻し、動作テストを行います。しかし、必ずではありませんが、テープの終盤で再生が停止するときがあります。モーター内部接点の接触不良です。冒頭の処置では不足していたようです。
モーターを分解します。
接点が黒く酸化しています。
研磨清掃します。元通りに組み付け、慣らし運転を十分行った後に、1日以上かけて走行テストを行います。
状態が改善されましたので、調整に移ります。315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
調整後です。
ヘッドアジマスの調整を行います。
ATCSボタンを押してバイアスとレベルを自動調整します。
左右同レベルの信号を入力し録再モニターします。バランスに狂いはありません。
テープポジションの異なる数種類のテープで録音状況を確認します。ところが、念のため長時間の動作テストを行っている最中に、不規則に速度が変化し、場合によってはキャプスタンモーターが停止することがあることが判明しました。
電源基板を点検したところ、コネクタの半田箇所にクラックが発生していました。念のため半田箇所すべてを再半田します。また、写真はありませんが、モーター基板の電解コンデンサー(10μF)と速度調整用の半固定抵抗の交換とIC端子の再半田を行いました。
まったく動作しないというケースでは動作確認は容易ですが、ときどき発生する不具合は、修理後の確認に時間を要します。
しかし、やはり速度が不定期に変化することがあります。モーター基板の交換が必要ですが、在庫はありませんし、同じ基板を搭載しているジャンク機でも入手するためには結構な出費を伴います。
結局、先日のTD-V931と同様、修理はここで中止となりました。