A&DのGX-Z9100EVの修理依頼をいただきました。
知人から譲り受けて、ご自分でベルト交換等されたものの、再生音が出ないということです。
録音済みのテープをセットして再生しても確かに音が出ません。
しかし、ラインインに外部機器を接続し「SOURCE」に切り替えると音は出ます。こういった事例は今まで何度も経験していますが、ほとんどがコネクタや背の高いトランジスタの半田クラックが原因ですので、今回もそうであろうと高を括っていました。
底板を取り外します。
本来点灯しているはずのダイオードが1か所(右写真下部)しか点いていません。
カバーを開けてコントロール基板と仕切り版を取り外します。
基板の半田付けの状況を点検しましたが、すでに、処置済みでした。ということは、他に原因があるということです。
さあ困りました。なぜなら、この機種の回路図は入手できないからです。まったく音が出ないという症状から、序段のアンプ部の電源ラインに不具合があると考えられますが、そもそもそれがこの基板のどの辺りなのかがわかりません。
仕方なく、ローラー作戦で、怪しいところをすべてテスターで当たっていきます。ヒントは、先ほどのダイオードの写真(右)で、左右対称のところが片方しか点いていないということです。点いている側は、-22V、点いていない側は+22Vラインです。
記事で書くと一瞬ですが、ここまでたどり着くのに1日以上かかりました。このトランジスタの出力電圧が、-22Vラインと比べると異常に低いことを見つけました。
2SC3383(Q116)という、なんの変哲もないトランジスタです。こういったトランジスタは滅多に故障しないので、疑心暗鬼でジャンク基板から移植します。
基板のダイオードがすべて点灯しました。この瞬間は何物にも代えがたいものがあります。
もちろん、再生音も正常に出力されます。今回は非常に珍しい故障で、かつ、回路図が無いというかなり不利な状況での修理でしたが、無事名機を復活させることができてホッとしました。