昨日のGX-9と同じオーナー様のデッキです。
再生後まもなく左CHからノイズが発生するということです。
とりあえず再生はできましたが、メカ部から異音が発生しています。また、テープポジション表示がチラチラし、その都度音質が変化します。しかし、ノイズはなかなか発生しません。
ノイズが発生するのを待っている間、何度も勝手に停止します。おそらくモーター内部接点の接触不良です。だましだまし再生を行い10分ほど経過したときに、突然、左CHから「ブツブツ・・・」というノイズが混じりだしました。トランジスタかコンデンサーの故障でしょうか?
まずはモーターの不具合を解消します。テープをセットしないで早送り状態にして半日放置します。これでほとんどが自己回復します。
基板修理を行うため、底板を取り外します。後継機のGX-93では底板を取り外すことができませんので、作業が大変ですが、こういった造りは修理時に非常に助かります。
オーディオ基板はチューニング基板の下にあります。この辺りが再生回路になります。
故障箇所を特定するため、再生回路の中間にある再生レベル調整用の半固定抵抗の端子1か所を基板から切り離します。
もちろんこの状態では左CHは出力はありませんが、ノイズは発生しません。ということは、ヘッドの信号を最初に処理する初段の回路に故障があるということになります。
電解コンデンサーを交換しましたが変化はありませんでした。次に左右CHのトランジスタをひとつずつ入れ替えて状況を確認します。しかし、2時間ほど掛かって作業を行いましたが、すべて正常でした。しかも、最後のトランジスタを交換したとたん、左右レベルが非常に低くなりました。これは何か変です。
ここはまさか無いよな・・・と思いながら、写真右下のDCバランスの半固定抵抗を回すと、
レベルが回復し、さらに調整を進めるとノイズも解消されました。DCバランスは通常触れることはまずありませんので、通常はノーマークですが、これほどの調整が必要だったということは、過去に何かあったのでしょうか?今となっては知る由もありませんが。
これでひと安心ですので、メカの整備に移ります。支障となるシスコン基板を後部にずらし、フロントパネルを取り外します。
ケーブルがコネクタ接続でないため、こんな状態で整備を行います。
カセットホルダー内蔵のスプリングがへたっています。
スプリングを脱着し加熱整形します。
機能が復旧しました。
アイドラーゴムにシリコンホースを切断したものが使用されていました。異音が発生していたのはこれが原因だったのでしょうか?通常のものと交換します。
硬化しているピンチローラーを交換します。
メカ背面の基板を取り外します。
モードベルトを交換します。
キャプスタンベルトも劣化して表面がスベスベですので、新品交換します。
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布し、組み付けます。
テープポジション検出スイッチの接点を清掃します。
元通り組み立てて動作テストを行います。
ミラーカセットを用いてテープの走行状況を目視点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
録再バランス調整を行います。
聴感で音質を確認し、普通はこれで修理完了となるところですが、再生が途中で停止しました。リールモーターの状態が思ったより悪いようです。
再度フロンパネルを取り外し、リールモーターを固定しているビスを緩め、モーターを交換します。
長時間のテストを行い、
今度こそ完成です。