先日修理したTC-K555ESXのピンチローラーの件です。
ご覧のとおり、全周にわたり酷いひび割れが生じていました。このピンチローラーは、見た目から、おそらくSONY純正のものと思われますが、これまで、同年代、またはそれ以前のピンチローラーを数多く見てきた中でも極めて稀なケースといえます。
SONYのカセットデッキでは、キャプスタンベルトについては製造時期によって違う材質のものが使用されていて加水分解などのトラブルが起きることがありますが、ピンチローラーに限っては、私の知る限りそれは無いはずですので、今回のような劣化の原因は、使用環境によるものではないかと考えています。
では、どのような使用環境が考えられるかというと、「クリーニング液」「温度」「大気中に含まれる物質」あたりではないでしょうか。
「クリーニング液」ですが、ピンチローラーについては専用品を使用しなければなりませんが、これまでゴムに悪影響を与えるようなものが使用されてきたという可能性があります。
次に「温度」ですが、そもそも気温の高い地域で使用されていた(今回は該当します)ことや、電源をONにしている時間が長時間であること、あるいは発熱の多いアンプの上にセットされていたことなどが考えられます。
最後に「大気中に含まれる物質」ですが、例えばオゾンはゴムを劣化させますので、オゾン発生機能付きの空気清浄機を使用していた、あるいは、以前も記事にしましたが、温泉地など、通常とは異なる特殊な環境であったということも考えられます。
以上、私が思いついた可能性を記載しましたが、今回の件で1点不思議なことがあります。
それは、右側のピンチローラーには、同じような異変が見られなかったということです。材質は同じと思われますが、なぜでしょうか?これ以上は当時部品開発に携わった方、あるいは専門家でなければわからないでしょうね。