PIONEERのT-1000Sの修理依頼をいただきました。
10年ほど放置状態だったということです。
「WAIT」状態のまま、トレイが半開きで動きません。
早速カバーを開けました。
メカを観察します。キャプスタンモーターのプーリーに溶けたベルトが付着しています。
フロンパネルを取り外し、
メカを取り出します。
キャプスタンベルトが2本とも溶けています。
モーターを取り外しました。付着した汚れはアルコールで拭き取ります。
カムモーターを取り外します。
汚れたフライホイールを清掃します。
カムモーターのベルトを交換します。
新しいキャプスタンベルトを掛けて組み立てます。
カセットハウジング内の化粧パネルを取り外します。
リール周りのパーツを分解し、アイドラーを取り出します。
硬化したゴムリングを交換します。
ピンチローラーは専用クリーナーで清掃します。
メカを本体に組み付けて走行テストを行います。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
調整を行います。
ヘッドアジマスの調整を行います。
と、ここで録音不良が判明しました。ノーマルポジションでは問題はありませんが、クロムとメタルでは音質や音量がかなり不調です。また、ドルビーをONにするとさらにそれが悪化します。
録音回路の故障と思われますが、この辺りの機種で回路の修理を行うのは現実的ではありません。なぜなら、非常に回路が複雑なことや、整備性が悪いことなどから、故障箇所の特定が非常に困難で、費用もそれに比例して高額となるからです。おそらくメーカーサービス(現在は取り扱いはありません)で修理を行う場合も、基板ごとの交換を想定していると思われますので、ジャンク機を探して換装を行うという手もありますが、いずれにしても修理費用が相当高額になることが想定されます。
そのことをオーナー様にお伝えし、再生及びノーマルテープでの録音に問題がなければ現状でOK、ということで一旦ご返事をいただきましたが、翌日動作確認をすると、録音は正常に復旧していました。
なぜかははっきりとはわかりませんが、長期間保管状態であったため、リレーなどに接触不良が起きていたものが、使用を開始したことにより自然復旧したということなどが可能性として考えられますが、いすれにしても再発しないか十分確認の上、オーナー様の元にお返ししたいと思います。