以前から当店をご利用いただいている方からのご依頼です。
SONYの3ヘッドデュアルキャプスタンカセットデッキ、TC-K222ESLです。7年ほど前に中古動作品として購入後、しばらくしてヘッドが上がらなくなり、また、たまに正常に動作してもテープがシワシワになったため、他店で修理に出したということです。しかし、修理後も改善は見られず、最終的に「メカが歪んでいる」と言われ諦めていたということですが、果たしてその診断は正しいのでしょうか?
リッドが開きません。
カバーを開けます。
トレイのロックを内部から解除し、リッドを取り外します。
メカを降ろしました。コネクタの基板接続部が破損して補修されています。おそらく無理に引き抜いたことが原因です。こういった小さいコネクタは、抜くときにコツが必要です。
カセットホルダーと化粧パネルを取り外します。
調整式になっている左側のピンチローラーアームに見たことの無いスペーサーが挟められていますが何故でしょうか?
ピンチローラーアームが約1mm、前方にせり出しています。これがテープがシワシワになった原因のひとつと思われますが、調整不良ということもありますが、そもそもアームを取り付けるシャフトが抜け出しているようです。
先ほどのスペーサーはそのために挟めたものと思われますが、その処置ではダメです。それで治らなかったため「メカが歪んでいる」という言い訳になったようですが、この状態は根本的に補修しなければ改善されません。
指差ししているのがピンチローラーを取り付けるシャフトですが、予想通り簡単に抜けてしまいました。製造時の僅かな寸法誤差が原因ですので、差し込み部に抜け防止として少し傷を付けてハンマーで製造時の位置まで打ち込みます。
キャプスタンモーターを分解します。
電解コンデンサーは交換済みです。
キャプスタンのシャフトにグリスを塗布します。
メカフロント部を分解します。
ゴムベルトの代わりに使用されていたバンコードが切れています。溶着部でない箇所が切れていますが、通常そういったことはあり得ませんので、取付の際に傷が付いたことが原因と思われます。
ベルトが掛かっていた周辺に傷が付いています。バンコードを取り付けるのに相当苦労されたようです。
モータープーリーの位置が1mmほど奥まっています。これも人為的な処置です。
一旦モーターを取り外し、正規の位置に修正します。
ゴムベルトを仮掛けします。
ロータリーエンコーダーを分解します。
汚れた接点を研磨清掃します。仕上げにスライド接点専用グリスを処置します。
テープポジション検出スイッチの接点を磨きます。
メカを組み立てていきます。
劣化したピンチローラーを交換します。
メカの整備が完了しましたので、本体に戻して動作テストを行います。
メカの調整を行う前に、基板の補修を行います。
メイン基板を取り出しました。指差ししている銅板のアースラインの半田付け箇所を点検します。
それほどではありませんでしたが、僅かにクラックが入っています。放置しておくと熱膨張と収縮で接触不良となり、メーターが振り切れるなどの故障の原因となります。
半田を盛ります。ついでにクラックの起こりやすい外部端子の半田部も同様に再半田します。
調整に移ります。ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度が許容範囲内に収まっているか確認します。
ヘッドアジマスの調整を行います。
録再バランス調整を行います。
長尺テープを中心に複数のテープで録音再生状況を確認し、修理完了です。