少し前からお取引いただいている方からのご依頼です。
NakamichiのCR-40です。ジャンク品を購入し、ご自分でテープ走行するところまでメンテナンスされたということですが、バイアスキャリブレーションが不調ということでご依頼がありました。今回はベルト2本の交換も併せて行います。
機器をお送りいただき、キャリブレーションの状況を確認しましたが、写真のような状態が限界です。この状態で録音してみましたが、明らかに原音とは異なる再生音でした。
テスターを用いてバイアス回路内の電圧チェックを行いましたが、特に不具合は見られません。これ以上回路の点検を進める前に、どこに不具合があるのかを特定したほうが早道です。
そこで、少し手間がかかりますが、私が所有するCR-40のメカと換装してみました。すると、まったく正常でしたので、回路ではなくヘッドの問題であることがわかりました。しかし、ヘッドの故障ということであれば、スペア品はありませんのでその時点でゲームオーバーです。
早速、ヘッドの点検を行います。まずは再生ヘッドです。315Hz、1000Hz、10000Hz、12500Hzのサイン波が録音されているテープを再生します。ほぼフラットですので再生ヘッドには問題はありません。
続いて録音ヘッドです。アジマスを点検したところ、確かに狂いは見られましたが、問題が起きるレベルではありません。
これで最後です。普通はここが原因であることは考えられませんが、録音ヘッドの高さを点検調整してみます。なお、ダイヤルは回す前に必ず元の位置をマーキングすることが必要です。そうしなければもとに戻すことは極めて困難です。
調整ダイヤルを回していくと、バイアスレベルがどんどんと上がっていきます。大体、時計回りに30度ほど回したところがベストポジションでした。以前のオーナーが弄ったのでしょうか?
音質を確認してみます。まだ調整の余地はありますが、大幅な改善が見られました。
オーナー様に以上状況を踏まえた見積額をお知らせしたところ、「以前ZX-5でバイアスVOL故障を経験したので、CR-40も同様の故障が起きないか不安なため、この機会に改善できないか」とのお話をいただきました。ZX-5は標準的なVOLが使用されていて新品の代替品との交換ができましたが、CR-40はどうでしょうか?
そこで、VOLユニットを取り出して規格を確認しましたが、シャフトが30mmのタイプで入手できません。そこで今回は、接点復活剤による処置を行うこととしました。
次に移ります。ベルト交換を行います。
まずはバックテンションベルトです。
続いてキャプスタンベルトです。
メカを本体に戻して調整に移ります。ミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。キャプスタンベルト交換の影響もあると思いますが、1%強の狂いでした。
再生ヘッドのアジマスの調整を行います。
録音ヘッドのアジマスの調整を行います。
最後にバランス調整ですが、ナカミチはテープポジションごとに調整が可能という理想的な設計になっています。
ノーマル、クロム、メタルと3回、バランス調整を行います。
最後にテープポジションの異なる数種類のテープで録音再生状況を確認し、修理完了です。ジャンク機には思わぬ落とし穴が待っていますので購入には注意が必要です。