ナカミチのZX-5の修理依頼をいただきました。
1年ほど前に中古動作品として購入した機器が最近、再生中にテープ走行が途中停止するようになったということです。
動作テストを行います。すぐには不具合は起きません。それよりも2点ほど気になることがあります。
1点目は音質がナカミチらしくないということです。
現在の状態を測定します。ヘッドアジマスに大幅な狂いが見られます。
そのため、周波数特性は高域の出力が大幅に低下しています。
もう一点は、走行中にヘッドの辺りから「ミリミリミリ」という嫌な音が聞こえることです。
テープを取り出すと、テープの端部がワカメ状に痛んでいます。ただし、これはテープ厚さの薄い120分などのカセットに限り発生するようです。いずれにしてもバックテンションに問題がある可能性があります。
以上2点は、整備後に再点検したいと思います。
そうこうしているうちに、不具合が再現しテープ走行が途中で停止しました。テープがはみ出しているということは、まっさきに右側のリール回転が停止したということになりますので、リールモーターの故障が原因です。
カバーを開けて、
メカを取り出しました。
順番に点検を進めます。まずはバックテンション用のベルトです。交換済みのようですが、
少しサイズが大きいため、当店がいつも使用しているサイズのものと交換します。テープが痛んだ原因はこれであった可能性があります。
カセットをセットしたことを検出するスイッチの接点を磨きます。
不具合の原因と思われるキャプスタンモーターです。
背面のプレートを取り外します。
接点が酸化し黒くなっています。
酸化被膜を除去し、接点復活剤を処置します。組み付けるときは治具を用いてブラシを傷めないよう慎重に行います。
アイドラーギヤを取り外し、無負荷状態にします。
そしてモーターに直接電圧を印加し空転させ、半日程度、接点の慣らし運転を行います。
モーター基板を取り外し、
フライホイールを脱着してシャフトにグリスアップします。
ベルトも新品交換です。
カムモーターユニットです。ギヤを取り外し、
接点を磨きます。
このモーターも内部の接点の接触状態改善のため、直接電圧を加えて空転させます。
元通りに組み立てました。
本体に戻して走行テストを行います。モーターが改善されたか否かを判断するため、1日程度かけて再生を行います。なお、この時点で走行状態も安定しテープが痛むことも無くなり、音質もかなりの改善が見られました。
1日経ちましたが不具合は起こりませんでしたので調整に移ります。最初にヘッドの調整ダイヤルの元の位置をマーキングします。
まずはミラーカセットを用いてテープの走行状態を目視点検します。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
周波数特性を点検します。高域の出力が整備前に比べて大幅にアップしています。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
録再バランス調整を行います。ナカミチのデッキはテープポジション別に調整可能ですので、ノーマル、クロム、メタルと3回調子します。
テープポジションの異なる数種類のテープで録音再生状況を確認します。流石ナカミチという音質です。
以上整備完了です。