私が会社員時代の同僚から、カセットデッキ2台の修理依頼をいただきました。もう一台はEXCELIAのXK-009ですが、後日記事にしたいと思います。
このTC-K555ESⅡは知人からの頂き物ということです。
例に漏れず、トレイがロケットオープンです。このまま使用を続けるとバネを支える箇所が破損しますので処置が必要です。
テープは走行し、音は出ますが早送りです。ヘッドとピンチローラーが上がり切っていないようです。それでも何度か繰り返しているうちに正常な状態に復帰しましたので、グリス硬化が原因と思われます。
事前のお話しでは音が籠っているということでしたので、まずは周波数特性をチェックします。緑色の縦線が、左から315Hz、1000Hz、10000Hz、12500Hzの出力を表していますが、たしかに10000Hzと12500Hzの出力がほぼありませんので高域の出力が低下しています。
まずはヘッドクリーニングと消磁を行ってみます。これでかなり改善が見られましたが、まだまだ改善の余地はあります。
続いてヘッドアジマスの状況をリサージュ曲線で測定します。アジマスの狂いもあるようですので、整備後に調整を行い再度周波数特性を確認したいと思います。
修理に移ります。カバーを開けると、まるで新品のように綺麗な状態です。
底板も取り外しました。
左写真は電源基板のトランジスタですが、放熱板が必要なほど発熱します。そのため、熱膨張と冷却時の収縮の繰り返しにより、半田付け部にクラックが入りやすいため、関係する箇所に再半田を行います。
メカを降ろしてカセットホルダーと化粧パネルを取り外します。
ロケットオープンの原因となったホルダーのダンパーを交換します。
化粧パネルの裏側にはプリズムが取り付けられています。
プリズムは、このランプの光でカセットの窓を照らすという役割のほか、回転センサーに光を伝達する重要な役割があります。
そのランプの光が当たる箇所は、埃で曇っています。これで動作不良になることがありますので、
綺麗に磨きます。
ピンチローラーアームの支点部に注油します。
ヘッドとピンチローラーがスムーズに上下することを確認します。
メカ背面のプレートを取り外します。
フライホイールとベルトを取り外すと、
ヘッドとピンチローラーアームを上下するレバーが現れます。今回の動作不良は、この支点部が固着したのが原因と思われますので、注油します。
キャプスタンのシャフトにグリスを処置し、ベルト交換をし組み立てます。
トレイの開閉状態を確認します。
本体に組み付けて動作テストを行います。
念のためテープパスを点検します。
315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
これでかなり高域の出力がアップしました。
続いて録音ヘッドのアジマスですが、ここで問題が起こりました。調整ネジをいくらまわしても変化がありません。
試しにこの状態で録音してみましたが、音が籠っています。
これは、他のジャンク機のヘッドですが、普通は、調整ネジを回すと録音ヘッドと再生ヘッドの隙間が変化します。
今回の機体は、ヘッドが固着していましたので、ヘッド同士の隙間に細いドライバーを差し込むことにより無事解消されました。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
録再バランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープで録音再生状態を確認し、修理完了です。