少し前に当店でカセットデッキを修理されたお客様から、新たな修理依頼をいただきました。
ナカミチのCR-40です。最近中古購入されたということですが、テープが損傷したり、スイッチの具合が悪かったりと不調ということです。
テープの損傷については、録音時間の短いテープでは再現されませんでしたが、おそらくテープ厚さの薄い90分や120分では問題が発生すると思われます。
操作スイッチの件ですが、ソースとテープを切り替えた際のノイズ発生や切替不良があるとのことでしたが、すでに接触が改善されたようで、動作確認では不具合の再現は見られませんでした。
もうひとつ、キャリブレーションスイッチの不具合は、押してもボタンが戻るといった状況が何回かに一回ほど見られます。
カバーを開けます。
不具合が見られるスイッチに接点復活剤を処置します。これでキャリブレーションのスイッチの不具合は改善されました。ケミカルに含まれる潤滑剤によりスイッチ内部の動きが滑らかになったためと考えられます。
メカを降ろします。
ハウジング内の化粧プレートを取り外します。
予想通り、バックテンションベルトが無くなっています。
リールを取り外すと、溶けたベルトが巻き付いてました。
清掃し、新しいベルトを掛けます。
続いてこのメカのウィークポイントのメンテナンスを行います。まずはカムモーターユニットです。
ユニットごと取り出し、カムギヤを取り外します。
カムでスイッチがONOFFするのですが、接点が酸化し黒くなっています。
接点を磨きます。
このモーターは、通常の使用ではあまり回転することがないため、内部接点の接触不良が起きることがあります。その予防措置として、モーターに直接電圧を印加して半日程度空転させ、接点の自己回復を促します。
これはリールモーターです。このモーターも内部接点の接触不良が起きやすいので、
アイドラーギヤを一旦取り外して無負荷状態にし、先ほどと同様、モーターを空転させます。
カセット検出スイッチの接点を磨きます。
ピンチローラーは表面が劣化し、テカリが見られますので、当店推奨の専用クリーナーS-721Hでクリーニングします。
メカ背面です。分解を進めます。
キャプスタンのシャフトにグリスを処置し、新しいベルトに交換します。
メカのメンテナンスが完了しましたので、本体に戻して動作テストを行います。
調整に移ります。315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
調整後です。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音時に不具合が見つかりました。左右バランスが異常に悪く、また、キャリブレーションのレベルが片チャンネル効きません。
原因は、レベルVOLの接触不良でした。VOL背面の隙間から接点復活剤を処置します。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
録再バランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープで録音再生状況を確認し、修理完了です。