SONYのTC-K777の修理依頼をいただきました。
現オーナーは、十数年前に中古動作品として購入されたということですが、数年間使用後にリールが回転しないという不具合が発生し、それが原因でテープ巻き込みを起こしたため、それ以降は使用されていなかったということです。
動作確認時は、再生可能でしたが、「ガー」という音が鳴り続けます。再生用のアイドラーゴム劣化が原因と思われます。
早送り巻き戻しは特に問題は無いようです。
カバーを開けます。メカは基本的に後継機の777ES、777ESⅡと同じです。コネクタにマーキングされていますので、過去に一度は修理されていることが分かります。
フロントパネルを取り外し、メカを取り出します。
メカ背面です。右写真は、トレイ開閉時のショックを吸収するダンパーです。
内部には高粘度のグリスが封入されており、回転部に抵抗を与えるという仕組みです。動きが重くなっていますので、少しグリスを拭き取って、機械油を一滴処置します。
開閉状況を確認します。
メカの分解を進めます。モーター基板を取り外します。
ベルトは劣化が進行していますので、後ほど交換します。
フライホイールを取り外し、
ソレノイドの動力をリールユニットに伝達するプレートを取り外します。
これでリールユニットを取り出すことができました。
アイドラーゴムは、写真中央部の再生用と、
同じく中央部の早送り巻き戻し用の2ケです。先日、オークションを閲覧したときに、このゴムリング2ケが7000円強の価格で出品されていましたが、当店では国内工場に直接発注していますので、価格は十分の一程度です。
再生用のアイドラーを取り外します。ゴムがプラスチックのようにカチカチです。以前特注したゴムリングと交換します。
リールユニットを分解し、もうひとつのアイドラーにアクセスします。
これも特注のゴムリングに交換します。
リールベルトを交換します。
キャプスタンのシャフトにグリスを処置し、新しいベルトを掛けて組み立てます。
ヘッドとピンチローラーがスムーズに上下することを確認します。
メカを本体に戻して動作テストを行います。ところが、「クシャクシャ」という音がして、テープに傷が入ります。テープのテンションに問題があるのでしょうか?
早速トルクメーターをセットし、左右リールのトルクを測定します。すると、FWDトルクが約80g・㎝と、通常の2倍の値を示し、バックテンションはほぼゼロという状況でした。これでは正常にテープ走行ができません。自然にこれほど狂うことは考えられませんので人為的なものと思われます。おそらく、以前の修理の際、アイドラーのスリップに対処するためトルクを強くしたものが、今回の修理でアイドラーのグリップが回復したためトルクが異常に強くなったと考えられます。
トルクは、メカ背面の調整ネジを回して調整します。しかし、いくら回してもバックテンションに変化が見られません。思わぬ事態にメカを再度降ろして分解します。
リールユニットを分解します。
中央の白色のプレートは、左側のリールをロックし、リール内に組み込まれたクラッチを作動させてバックテンションを発生させるためのものですが、ロックが掛からないように調整されていました。これも自然になったものとは考えにくく、人為的なものと思われます。
ビスを緩めて右写真のように調整を行います。なお、ここはブレーキと連動している箇所ですので、ブレーキの効き具合を見ながら慎重に合わせます。
再度メカを本体に組み付けて、トルク調整を行います。
これでテープテンションが正常になり、走行も安定しました。
ようやく通常の作業に戻れます。315Hzの信号が記録されたテープを再生し速度の点検を行います。
再生ヘッドのアジマス調整を行います。
録音ヘッドのアジマス調整を行います。
録再バランス調整を行います。
テープポジションの異なる数種類のテープで録音再生状況を確認し、修理完了です。