先日の9100EVと同じ方のデッキです。
AKAIのGX-9です。中古購入したものの、音が籠ったり正常になったりするということです。AKAIのデッキでは珍しい症状です。テープテンションにトラブルが起きているのでしょうか?
ヘッド周りに目視では異状は見られません。しかし、オーナー様のお話しどおり、テープ走行とともに音質が変化します。
FWDとバックテンションのトルクを計測しましたが、大きな問題は無いようです。
ミラーカセットでテープ走行の状況を目視点検すると、テープが撚れていることがわかりました。テープガイドの調整が必要な状態です。
これまで同じタイプのメカは100基以上見てきましたが、自然に狂うことはあり得ませんので、おそらく人為的なものです。
カバーを開けて、メカを取り出します。
カセットホルダーを取り外した状態でミラーカセットをセットし、
再生しながらテープの撚れがなくなるよう左右のテープガイドを調整します。
テープ走行が安定しました。しかし、音質はお世辞にも良いとは言えません。最終的な調整はメカのメンテナンス後に行います。
カセットホルダー内蔵のスプリングに経年による変形は見られません。おそらく以前修理された際に修正済みと思われます。
ヘッド周りに固着は見られませんが、古いグリスが付着しています。中途半端な整備が行われているようですので分解清掃します。
劣化しているピンチローラーを交換します。
左側のピンチローラーアームは調整式になっていますが、通常、固定はダブルナット方式になっています。(写真はダブルナットのうち1ケを外した状態です)
左は取り外したナットです。右側の専用品に交換します。
取り付け状態です。
左右リールとアイドラーを取り外します。
ゴムリングを交換し、ゴムの当たり面はアルコール脱脂します。
メカフロント部のメンテナンスが完了しました。
メカ背面の基板を取り外します。
ベルトの当たり面に汚れが付着して、触るとザラザラしていますので清掃します。
カムモーターのベルトを交換します。
テープポジション検出スイッチの接点を磨きます。
キャプスタンのシャフトにグリスを処置し、ベルトを新しいものに交換して組み付けます。
メカを仮接続してテープパスを点検します。
この時点では音質はイマイチです。
ヘッドアジマスを点検すると、大幅な狂いが認められます。テープガイド調整の影響もあるかと思いますが、これが音質不調の原因です。
調整後です。グラフの長さは高域の出力レベルを表していますので、大幅に改善されたことが分かるかと思います。
録再バランス調整を行います。
最後の最後、聴感テストの時点でトラブル発生です。特定のテープで「クシャクシャ」という音がして、テープに傷が入ってしまいました。AKAIのデッキではほとんど見られない症状ですが、全体のバランスが狂っているのでしょうか?
再度テープパスを微調整します。
ヘッドアジマスも再調整します。テープ走行の乱れは今回のように特定の種類のテープにのみ発生することが多いため、念のため、メーカー・銘柄・録音時間の異なる多数のテープでテストを行います。
以上、修理完了です。中古動作品については、個人の方がやみくもに弄った調整不良のものが多く出回っていますので、購入の際には追加の出費が伴うことがあるという覚悟が必要です。